2020 Fiscal Year Research-status Report
歴史的音変化の分析を通じた言語接触の痕跡から導く、多文化交流史の解明
Project/Area Number |
20K13026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
通山 絵美 京都大学, 経営管理研究部, 産学共同講座教員 (90867996)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歴史的音変化 / 言語接触 / ベトナム語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ベトナム南中部~南部地方に分布する諸方言を対象に、その形成過程における歴史的音変化に焦点をあて、背景にある言語接触の歴史との関係を総合的に検討する。 当初の計画では2020年夏期よりベトナム国家大学、言語学院(同国ハノイ市)、ホイアン文化遺産保存管理センター(同国ホイアン市)及びベトナム南中部~南部地方の農漁村において、音声データ収集と聞き取りによる方言調査を実施する予定であった。又、その結果を踏まえて南中部~南部方言の祖形の再建を行い、現在の形式に至るまでの歴史的音変化の考察と音韻規則の分類を進める予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大による渡航制限措置により、渡航を伴う調査を行うことが出来なかった。 よって初年度である2020年は、今後の研究計画を進めるための基盤整備として、先行研究の整理や文献調査とともに、2016年から2018年に自身で収集したベトナム語方言の音声データのうち、当初予定していた臨地調査の対象地域である南中部~南部ベトナムに分布する方言を選別し、音声分析をおこなった。しかし、現在手元にあるこれらの方言データは調査地域や収集語彙に偏りがあるため、今後の研究計画の遂行において代用資料とするには不十分であり、新規のデータ収集が急がれる。 今後、渡航制限措置が緩和された場合は、可能な限り早期に臨地調査を実施予定であるが、感染状況の拡大により調査の早期開始が難しい場合は、代替措置として、オンラインビデオ会議システム等を用いた遠隔調査を検討する。幸いにもベトナムにおいては感染収束とともに国内移動に対する制限も緩和されており、現地研究機関及び現地協力者との連携により今後の研究活動が円滑に進むよう準備を進めるとともに、研究計画の遅れの挽回に努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
方言データ収集の遅れ:先行研究では様々な視点からベトナム語諸方言の考察がなされてきたものの、その殆どが音声データを公開しておらず、現時点で利用可能なデータベースは存在しない。よって本研究では独自に音声データ収集が必須であるものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う渡航制限措置により、当初予定していたベトナム南中部~南部での方言調査を断念せざるを得ず、当初の研究計画と比べ音声データ及び関連資料の収集が遅れている。本研究における方言調査地域の多くは農漁村の小さな集落であり、医療資源が十分ではない。また現代ベトナムは、経済発展や教育政策に伴い、特に若い世代を中心に急速に標準語化が進んでいるため、本研究のインフォーマントは高齢層を対象としている。彼らの身体的・心理的負担を考慮しても現地感染状況の収束を待つ必要があると判断した。幸い2020年3月時点で、ベトナム国内の感染状況は落ち着きを見せており、経済活動の再開とともに国内の移動制限も解除されているため、2021年度より調査開始予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」でも述べたように、新型コロナウィルス感染症拡大に伴う渡航制限措置により、当初の計画である臨地調査の遂行については不透明な状況である。早期解決が困難な場合を想定し、2021年度は以下の方策に則って研究を進める。まず、臨地調査に代わる手段として、オンラインビデオ会議システム等を用いた遠隔調査や、現地協力者への録音依頼等の代替措置を講ずる。特にベトナムにおいては感染状況も落ち着いており、国内移動が可能であることから、当初は2020年度に訪問予定であった大学、博物館などの地域研究機関に対して、上記の調査協力を依頼する予定である。録音後のデータ分析に耐えうる音質を担保するためには、機材や収音環境等一定の知識が必要となるため、協力者への機器送付や使用方法のガイダンスを実施し、データ収集環境を整備するとともに、インフォーマント及び現地協力機関に対して過度の負担とならないよう、慎重に進める。また今後、渡航制限措置が緩和された場合は、2021年内にベトナム中南部~南部にて、当初は2020年夏期に実施予定であった方言調査を行う。これに先立ち、現地資料の積極的な収集とともに、現地研究機関や行政機関、関係者との協議を重ね、来る方言調査を迅速円滑に実施できるよう準備を進める。いずれも受け入れ国・地域の法令等を遵守するとともに、社会情勢、医療事情に十分に気を配り、関係者・機関の理解と協力を得られるよう努める。 上記方策に則ったデータ収集と分析を通じて、方言同士の系統関係の特定と方言祖形の再建を進める。2021年度内に歴史的音変化の解析と分類作業に移行できるよう、これらをすみやかに実行する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:当初予定していた海外での方言調査が、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限措置により、実施できなかったため。 使用計画:2020年度に予定していた方言調査を実施するための海外渡航費用、インフォーマントや協力者への謝金、及び録音機材用の記録媒体の購入費用とする。
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