2020 Fiscal Year Research-status Report
人称表現を用いた心的態度の伝達ストラテジーに関する日仏対照言語学研究
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20K13030
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
牧 彩花 東京国際大学, JLI, 講師 (70863504)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人称 / 主観性・主体性 / 心的態度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本語とフランス語において、自他を指し示す行為がどのように発話者の外界認知に結びつき、コミュニケーションの場で発話者の心的態度を伝達するストラテジーとしてどのように働いているのかという問いを通して、日仏語の質的な差異と類似性を明らかにすることを目的としている。 初年度となる2020年度は、研究を行う上で、キーワードとなる「心的態度」「主観性・主体性」「待遇表現・ポライトネス」のうち、主に「主観性・主体性」の概念について先行研究にあたりながら考察を深めることができた。このテーマは2018年12月に東北大学で行われたシンポジウム「語りと主観性―自由間接話法とその他―」でも中心的に扱われていたテーマであり、自身の発表においても要となるものであった。今年度はこのシンポジウムでの発表を基にした論文を執筆することに力を注いだ。本論文が掲載される書籍は2021年度に刊行予定である。 また、このほか、人称表現の例外的な使用がコミュニケーションにおいてどのように作用しているのかという問いのもと、個別的な現象を考察した論文2本を執筆した。1つはフランス語の人称詞の例外的な使用が発話者と共発話者との相互的な対話関係を変容させ一種のコミュニケーションストラテジーとして働いているということを論じたものであり、日本フランス語フランス文学会東北支部会誌『Nord-Est』に掲載された。もう一つは、前年度に仏国で行われた国際シンポジウムでの発表を基にした、日仏語の人称転換現象の差異を論じたものであり、TOUR(Tohoku University Repository)にて論文集が公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内外でのインタビュー調査を十分に行うことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の大きな研究課題としては、本研究においてキーワードとなる「心的態度」について、先行研究にあたりながら、本研究における定義を確立させていきたい。また、具体的な研究成果の発表としては、前年度末から取り組んでいる日本語の人称表現の学習者の誤用に関する研究を5月に日本語教育学会で発表することが決定している。この内容を更に発展させ、論文を執筆する。そのほか、新型ウイルス感染拡大の影響で昨年度開催が見送られたEuropean Association for Japanese Studiesの国際集会がオンラインで夏に行われるので、日本語の一人称詞に関する研究発表をここで行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、国際学会での発表は来年に延期されたほか、国内での学会もすべてオンラインで実施され、旅費としての支出がなくなったため。
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