2021 Fiscal Year Research-status Report
人称表現を用いた心的態度の伝達ストラテジーに関する日仏対照言語学研究
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20K13030
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
牧 彩花 東京国際大学, JLI, 講師 (70863504)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人称 / 主観性・主体性 / 心的態度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本語とフランス語において、自他を指し示す行為がどのように発話者の外界認知に結びつき、コミュニケーションの場で発話者の心的態度を伝達するストラテジーとしてどのように働いているのかという問いを通して、日仏語の質的な差異と類似性を明らかにすることを目的としている。 2021年度は「複数性」と「不定性」という観点から日仏語の人称表現を検討した。特に、日本語の「人々」という語彙に関しては、学習者の誤用分析をもとに、他言語の人間複数を指す語との比較を通して、「人々」という語彙の用法やこの語彙が内包する「複個数」という概念について考察を深めることができた。今後は、これまで検討してきたフランス語の不定人称詞 on と照らし合わせ、日仏語それぞれの言語の学習者の使用状況・誤用を分析することでさらに研究を発展させていきたいと考えている。 このほか、2020年度に新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催が延期されていたEuropean Association for Japanese Studiesの国際集会がオンラインで夏に開催され、同じくコロナウイルスの影響で出版が遅れていた『語りと主観性―物語における話法と構造を考える-』が出版されるなど、昨年度より継続してきた日仏語の一人称表現に関する研究成果を発表することができた。前者は日本語一人称表現の逸脱的な用法とそのコミュニケーションにおける効果を分析するものであり、後者は日仏語の一人称表現の質的な差異を分析した上で、他者の発話の引用という行為において、両一人称表現のもつ特徴が発話者の表現意図を叶える道具として効果的に働いていることを指摘するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内外でのインタビュー調査を十分に行うことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は引き続き、人称表現における「複数性」と「不定性」をテーマに日仏対照の観点から研究を進めていきたい。2021年度に日本語学習者コーパスの分析を十分に行うことが出来たので、2022年度はフランス語学習者の人称表現の使用状況、誤用分析を中心に取り組む予定である。研究成果は、日本フランス語教育学会、日本外国語推進機構などで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、参加を予定していた国際学会、国内での学会の大半がオンラインで実施され、旅費としての支出がなくなったため。
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