2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13031
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
木島 愛 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (40767563)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凝結表現 / 日仏対照 / 知覚動詞 / 語彙文法理論 / 凝結度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は凝結表現のデータベース構築に向けて,知覚動詞の個別事例を詳細に検討した.日仏両言語に対応させるため,フランス語の en voir de belles [de bleues, de toutes les couleurs, de vertes et de pas mures] (ひどい目にあう)という表現を出発点とし,フランス語で同様の意味を表すことができる表現から,en voir deという統辞構造に着目し,「ひどい目にあう」という意味は,異なる要素X ではなく,en voir de X という形式によって導き出されているのではないかという仮説を検討した.また,Xとして用いられる要素を通時的に観察することにより,時代別の変化が生じていることを明らかにした.今まで分析対象とされてこなかった表現に光を当て,通時的変化を指摘することにより,今後の辞書編纂はもちろん,言語学習者により時代に沿った表現の使用を促すことができるようになるだろう. また,日本語に関しても「ひどい目にあう」や「辛い目を見る」のような表現に着目し,「X目にあう」「X目を見る」という2つの形式をフランス語の視覚動詞voirと比較することによって,これらの表現に含まれる意味構造の違いを追求した.また,Xとして用いられる要素を調査し,それが用いられる場合の動詞との関係から,出来事に対する主体の認識によって言語が選択されいるのではないかという仮説を立てるに至った. これらの個別事例分析をデータベースに反映できるよう,情報工学分野でのデータ収集,分析方法の検討も2022年度に引き続き行うことにしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は2020年度に引き続き,知覚動詞の統辞的・意味的特徴を分類,実例の収集と検討,データ化の準備を行い,新たに他の動詞の分類とデータ化を計画していた. まず,知覚動詞の統辞的・意味的分析,実例の収集と検討は概ね順調であり,"Les traits communs trouves dans les verbes visuels francais et japonais par l’entremise des expressions figees en japonais (日本語の凝結表現から見えてくるフランス語と日本語の視覚を表す動詞に共通する特徴について) "というタイトルで,フランスで行われた知覚に関する国際学会にてパリ13大学の研究者と共同で発表を行ない,今後論文として発表される.また,2020年5月に日本ロマンス語学会第57回大会にて発表した内容を「En voir de X の構文化の可能性を探る」という論文として刊行する準備を行なった. しかし,データ化に関わる部分では,フランスの研究者との共同作業が難しい情勢が続いているために遅れが生じている.日仏データベースを構築するためのデータ処理の基準の調整を急いでいるところである.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はデータベースを構築するためのデータ収集と,ソフトウェアの確立を行う.フランスのソルボンヌ・パリ・ノール大学の研究者と共同でデータベースを構築していく. 現状ではまだフランスの研究所にて直接議論を行なったり,技術の共有をすることは難しいと考えられることから,日本国内にて,日本語のデータベースを構築しつつ,日仏両言語に対応するために準備を進める.
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Causes of Carryover |
海外で開催される国際学会が中止もしくはオンラインになったことや,データベース構築のために,フランスの研究所での作業を予定していたが,2021年度は引き続き海外への渡航が難しかったため,旅費を使用することができなかった. 2022年度に海外への渡航が可能となった場合には,フランスの研究所にて作業をし,国際会議へも積極的に参加する予定であり,未使用額はその費用に充てる.
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