2021 Fiscal Year Research-status Report
Lexical stratification in Japanese: Phonological cues to stratal affiliations
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20K13039
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田中 雄 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (30802996)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 語種の区別 / 漢語 / 漢字の読み / 心理言語学実験 / コーパス研究 / 国際学会発表 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、和語・漢語・外来語などの異なる語種を併せ持つ日本語の語彙を研究対象としている。心理言語学実験の実施や、コーパス・辞書データの分析を行うことで、実際に日本語話者が心理内で語種の区別を行っているのか、またその場合、特にどのような音声の特徴に基づいて各語種を区別しているのか、という問いを検証することが、研究の主な目的である。 データ収集における成果として、日本語話者を対象にした語種の区別に関わる複数の実験をオンラインにて実施し、多くのデータを得た。具体的には、馴染みのない複合語の漢語について、訓(和語)読み・音(漢語)読みのいずれかの読みを選択させる実験と、同じく馴染みのない単語に「御」をつけた美化語について、「お」・「ご」のいずれかの読みを選択させるという実験を実施した。また、「日本語書き言葉コーパス」(国立国語研究所)で、「お」と「ご」の実際の使用分布についても調査を行った。その後、実験・コーパスで収集したデータを、統計的・理論的に分析した。 発表面での成果として、主に漢語に関するデータの分析結果を、2つの国際学会にて発表した(Phonology-Morphology Circle of Korea:招待あり・口頭発表、The Annual Meeting on Phonology:概要査読あり・ポスター発表)。また、和語の特徴の一つである複合語の濁音化現象(連濁)について、本課題開始以前に実施した調査で得たデータに基づき、統計的・理論的に分析してまとめた共著論文を、国際学会誌にて発表した(Kawahara & Tanaka 2021)。 以上により、日本語の語彙において、特に漢語と和語という語種が心理的に区別されていること、また各語種の「らしさ」を想起させる音声的な特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初2020年度に予定していた対面での実験や海外での学会活動を十分に行うことができず、全体の進捗としてはやや遅れている。一方で、2021年度はオンラインでの実験やコーパス研究によりデータを収集したほか、オンライン国際学会や学会誌にて一部の成果を発表するなど、一定の進捗はしている。研究期間を延長した2022年度は、引き続きいくつかの実験を行ってデータの収集・分析を続け、これらの成果をまとめたものを国際学会・学術誌にて発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長した2022年度は、引き続きいくつかの実験を行ってデータの収集・分析を続け、最終的にこれらの成果をまとめたものを、国際学会・学術誌にて発表する予定である。データの収集については、これまでの実験で扱った複合語の読み方や丁寧語における「御」の使用パターン以外にも、語種の区別が関連すると思われる現象(複合語の濁音化やアクセントの付与など)を基にデザインした心理言語学実験を行う。また、和語・漢語だけでなく、外来語の区別と特徴についても調査を進める。さらに、これまでは大人の話者を対象とした実験を実施してきたが、今後はより発展させ、子どもに対しても類似の実験を行うことを計画している。これらの研究により、日本語話者の心理内で和語・漢語・外来語の区別はされているのか、どのようにその区別が獲得されるのか、そして各語種「らしさ」を想起させる音声的特徴は何か、という問いを検証する。最終的には、2020年度から2022年度の研究成果をまとめ、国際学会で発表するほか、学術誌に複数の論文を投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた対面での実験を実施しなかったため、「人件費・謝金」(実験実施補助のためのアシスタントの人件費)や実験実施に必要となる「物品」の購入費が発生しなかった。(オンライン実験実施に伴った参加者への謝金は、クラウドソーシングサービスを経由して支払いを行ったため、項目「その他」として計上している。)また、参加した国内・国外での学会や研究会が全てオンラインでの実施となったため、渡航費や宿泊費などの「旅費」の支払いも発生しなかった。(オンライン学会への参加登録費は、項目「その他」として計上している。)以上の理由により、次年度使用額が生じることとなった。 今後の使用計画については、研究期間を継続した2022年度もオンラインでの実験実施を予定しており、それに伴う参加者への謝金の支払いをするほか、コーパス・辞書データの収集の補助をするアシスタントへの人件費の支払い、研究に用いるパソコンや機器類の購入を予定している。また、今後学会等が対面での実施となった場合は、参加に伴う旅費も支出する計画である。
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Research Products
(3 results)