2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on phonological discrimination and acquisition of infants: approach from Mongolian and Chinese liquid sounds
Project/Area Number |
20K13043
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿 栄娜 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (20710891)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音声言語の獲得・発達 / 乳児 / 音韻弁別 / 流音 / 知覚実験 / モンゴル語 |
Outline of Annual Research Achievements |
母語の獲得には、乳児期に獲得される音韻体系が極めて重要な役割を果たす。本研究ではモンゴル語の/r/と/l/の音韻弁別知覚実験を通して、乳児が日本語音素の/r/を弁別・獲得するメカニズムを解明する。 2020年度の4-7月は、先行研究を参考しながら音韻弁別実験用のモンゴル語の音声刺激(語頭で/r/と/l/が対立する単語)の選定および録音を実施し、その音声を知覚実験用のプログラムに取り込んだ。当初の計画では、2020年度の後期に日本語を母語とする成人を対象に、2021年度に乳児を対象に、モンゴル語と中国語の/r/と/l/をどの程度弁別できるのかを知覚実験によって確認する予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の影響を受け、大学のキャンパスで大学生に知覚実験をお願いするのは困難になったため、乳児の知覚実験を先に実施した。 具体的には、2020年8月―2021年3月までに日本語を母語とする乳児(4.5か月と9.5か月)延べ90名を対象に視覚的馴化脱馴化法を用いてモンゴル語の/r/と/l/を弁別できるかどうかを調べた。31名の乳児は泣きや馴化しなかった等の理由によりデータに含めなかった。最終的には4.5か月の乳児33名、9.5か月の乳児26名のデータを収集できた。乳児のテストトライアル中の画面の注視時間は2名の訓練を受けた者によってフレームごとにコーディングされた。その結果、4.5か月の乳児は/r/と/l/を弁別できなかったが、9.5か月の乳児は弁別できるようになった。日本人の乳児は月齢が上がるに連れ、英語の/r/と/l/の弁別能力が落ちるとされているが、モンゴル語に関してはそれとは逆であることが明らかになった。今後は日本人の大人がモンゴル語の/r/と/l/をどの程度弁別できるかを調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述で示したように、計画通りに音韻弁別実験用のモンゴル語の音声刺激の選定および録音を実施することができた。また、新型コロナウィルス感染症の影響を受け、当初の計画通りに大人で知覚実験を実施できなかったものの、計画を変更して先に乳児を対象に視覚的馴化脱馴化法を用いた実験を遂行することができ、興味深い実験結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は産休・育休をいただくため、研究計画を予定通りに進められない見込みである。復帰後は、以下のように研究を進める予定である。 (1)2020年度で得られた研究成果を国内外の学会で発表し、その内容を論文にまとめ投稿する。 (2)2020年度に乳児で行った音韻弁別知覚実験で使用したモンゴル語の音声刺激の対は中国語でも成り立つため、中国語母語話者で同じ音声刺激の録音を実施する。 (3)日本語母語話者(成人)でモンゴル語と中国語の/r/と/l/の知覚実験を実施する。場合によっては、モンゴル語母語話者と中国語母語話者にもそれぞれの母語の/r/と/l/の知覚実験を実施する。 (4)成人の知覚実験の結果をみながら、乳児で中国語の/r/と/l/の音韻弁別実験を実施するかどうかを決める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により、国内外の学会出張や研究打ち合わせ用の旅費の出費がなくなったため、予定していた当該年度の使用額を使い切ることができなかった。 次年度以降は学会などでの研究成果発表のための旅費、論文の校閲・投稿費、実験協力者への謝金、実験機材の購入などに使用する予定である。
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