2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on phonological discrimination and acquisition of infants: approach from Mongolian and Chinese liquid sounds
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20K13043
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿 栄娜 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 客員研究員 (20710891)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 音声言語の獲得・発達 / 乳児 / 流音 / 音韻弁別 / 知覚実験 / モンゴル語 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の言語の流音のタイプに「単式」と「複式」がある。単式の言語は/r/と/l/を音韻的に区別せず、複式の言語は/r/と/l/を音韻的に区別する。世界の多くの言語は複式型に属するが、日本語は単式型である。そのためか日本語母語話者は英語の/r/と/l/の弁別が困難であるとされてきた。しかし、先行研究では英語の流音のみが対象になり、他の言語の流音でも同様の結果が得られるかは不明である。本研究では複式型の言語であるモンゴル語の/r/と/l/の音声刺激を用いて、日本語を母語とする乳児と大人を対象に弁別実験を行ってきた。 モンゴル語は、アルタイ・ウラル語族の特徴により、語頭に/r/音がくることを嫌う。/r/音で始まる単語はほとんど外来語である。しかし先行研究では、語頭で対立する音声を使っていたため、本研究でも語頭で対立する音声刺激を用いた。 これまでに得られた主な結果は以下の通りである。①、4~5か月の日本語を母語とする乳児はモンゴル語の/r/と/l/を統計的に有意に弁別できないが、9.5か月の乳児は弁別できることが明らかになり、先行研究とは異なる発達のパターンが確認された。②、日本語を母語とする成人24名と中国語母語話者の成人16名を対象にAX taskを用いて①の音声刺激の対を弁別できるかを確認した。その結果、日本語を母語とする成人のモンゴル語の/r/と/l/の弁別課題における正答率は約58%であるのに対し、中国語母語話者の平均正答率は約96%であった。日本人の大人にとって、語頭におけるモンゴル語の/r/と/l/の弁別は困難であることが明らかになった。 上記の②の内容を日本音声学会で口頭発表を行った。また、実験の結果をまとめ、英語で論文執筆を行った。近日中に海外の学会誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた乳児を対象にした実験に加え、大人を対象にした知覚実験も実施できた。実験の結果、日本語を母語とする乳児と成人、中国語母語話者でモンゴル語の/r/と/l/の弁別パターンが異なることが明らかになった。 また、研究成果を日本音声学会で発表し、研究成果の内容を論文にまとめる作業を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験では、語頭で対立するモンゴル語の/r-l/の無意味語の音声刺激を使用した。語頭で現れるモンゴル語の/r/はそり舌音で発音されるが、語中や語末の/r/音は弾き音または震え音で調音される。一方で日本語の/r/音は弾き音で調音される。 そこで、最終年度には、語中または語末で/r-l/が対立するモンゴル語の音声刺激を用いて、日本語を母語とする乳児に弁別実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は1年間の産休育休を取得したため、研究を遂行することができなかった。さらに、コロナ感染症の影響により、ここ数年は国内外の学会や研究会に出張する機会がほとんどなかったため、次年度使用額が生じた。 最終年度は国内外の学会などでの研究成果発表のための参加費・旅費、論文の校閲・投稿費、実験協力者への謝金などに使用する予定である。
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