2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K13052
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
當山 奈那 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (90792854)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 琉球諸語 / ヴォイス / 使役 / 利益性 / やりもらい表現 / 受動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,UNESCOに危機言語として認定された琉球諸語内の6つの主要な言語(奄美語,国頭語,沖縄語,宮古語,八重山語,与那国語)を対象に,受動文,使役文,授受文の記述を行い,各方言のヴォイス体系を明らかにし,琉球諸語全域のヴォイスの構造,文法形式,意味の発展の方向性を考察することを目的とした。調査地点は,1徳之島岡前,2与論島麦屋、3伊平屋島島尻,4首里,5平安座島,6波照間島,7宮古島福里,8多良間島,9与那国島である。 最終年度は,2年目までに書き上げた記述の補完調査を実施した。また,covid19の影響で,現地調査が困難になったため,本研究開始以前のMDでの音声データをデジタルデータ化し,研究に必要なデータを収集した。調査票をレターパックで郵送して行う通信調査も実施した。 琉球諸語の使役文については,学会で報告を行い,フィードバックを得た。また,琉球諸語の自他動詞と他動性の特徴をまとめて,研究会での報告を行った。それを基に,琉球諸語の使役と受動・授受について,文法的な形式と意味構造の発展について考察した論文を執筆した。 本研究では,琉球諸語内で二重使役文が発達する条件や,シテモラウ文や自動詞受動文が発生しなかった要因,あるいはそれらの相関など,歴史的な変化と発展の結果生じた現在の琉球諸語のヴォイスにおける多様性の原因と変化過程について考察することができた。 なお,研究で収集したデータは,アノーテーションとしての音韻表記,形態素ごとの意味機能のグロス,日本語対訳を付した。 各地点の調査で,これまでに報告がなされていなかった言語現象をいくつかみつけることができた。これらの現象について詳細な分析を実施し,行為項派生の観点から琉球諸語の現象を再考することが今後の課題である。
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Research Products
(2 results)