2021 Fiscal Year Research-status Report
Linguistic Development of Japanese Composition Materials in the Taisho and Showa period
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20K13057
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
高谷 由貴 東亜大学, 人間科学部, 講師 (80866864)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーパス / 接続表現 / 引用 / ト / トテ / 作文資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,評価が高まりつつある大正期から昭和期にかけての作文資料および手書き資料の言語学的価値に注目し,これらの資料を収集・保存・データ化することにより,WEBコーパスの公開と,大正・昭和期口語の分析を目指す研究である。 本研究の目的に照らし,当該年度は資料の報告(2本),大正期資料を使用した口語の分析(論文1本),Webコーパスを使用した学会発表2件(うち一本は全国学会)を行った。 報告としては、髙谷由貴(2021)で、昭和前期の作文資料および手書き資料の収集報告を行った。主に当時の小学生・中学生による作文帳・学習帳を対象に,古書市場に出回っている資料を収集し,資料の概要を記録したものである。 論文としては,髙谷由貴(2022)において,近代語のコーパス資料の調査・分析を行った。発話・思考の引用や極限のとりたてとして使用されるトテについて,その使用の衰退の様相を,文体的特徴の観点から記述するものである。トテは中古以降,主として引用の際に広く用いられてきた語であるが,現代語においては衰退傾向にある。しかしながら,明治・大正期の雑誌・小説の中には,トテの使用が確認される。本稿は,近代語におけるトテの具体的な衰退状況について,ダッテと比較しながら,文体,使用場面,そして人物描写の観点からも調査・考察した。 髙谷由貴(2021)「昭和期作文資料の収集報告-昭和期の小学生・中学生による学習帳および投稿雑誌について-」『東亜大学紀要』第32号27-30/髙谷由貴(2022)「『日本語歴史コーパス明治・大正編Ⅰ雑誌』におけるトテとダッテ」大阪大学国語国文学会,『語文』第116・117輯合併号
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響を受けて、他地域への出張や資料収集は難しい状況が続いていた。しかしながら、収集できた資料の報告と、調査も引き続き行い、オンライン学会での口頭発表や論文出版も行った。2022年度も引き続きオンラインでの研究発表・学会発表の予定があり、積極的に活動を続けていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集と平行して、コーパス資料を使用した研究成果の発表を引き続き行いたい。 具体的には、現在行っている日本語の引用形式についての記述を進めていく。引用形式は「と」や「って」 が知られているが,両者は談話で用いられる位置に差があることが指摘されている。「と」は談話の開始部分,終結部分に現れやすいという。この点について「まとめ上げる」機能を有すると考えることで「と」の出現位置の特徴を説明することを目指す。具体的には,まとめ上げを行うとされる他の形式と「と」は親和性が高く,「って」はそうではないことを観察する。また,前文が長くなればなるほど,「って」よりも「と」が使用されやすいことを,アンケート調査を用いて実証的に示すことも目指す。
本研究のオリジナリティーは,引用助詞の振る舞いの差異について,「まとめ上げ」 という新たな概念を用いて説明する点にある。研究方法としては,実例調査と,日本語母語話者対象のアンケート調査を行っている。以下のような長い文章を受ける引用助詞としては「と」が「って」より選ばれやすいことがわかっている。 ・・・2ゲーム目まさかのローマン覚醒!!!ぐは・・・スコア百五十二対百八十九で僕の敗北。ローマン・・・遊び人の称号を与えよう。(中略)まってろ!ローマン!!オマエなどふるぼっこだ!!!(と,)/(#って)BLUE・ニコの日記でした。(Yahoo!ブログ/2008)以上のデータと分析結果は,昨年末,髙谷(2021)で発表したものである。今後はさらにデータを増やし,今年5月の日本語学会および日本語音声コミュニケーション学会にて発表することが決定している。できるだけ本年度中に出版することを目標として取り組みたい。髙谷由貴(2021)「接続表現ではない文頭の「ト」は何をしているか―引用との比較―」『日本語文法学会第22回大会発表予稿集 』日本語文法学会
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Causes of Carryover |
コロナの影響により出張ができず、旅費・人件費の使用が難しい状況だったため。学会発表もずべてオンラインで完結し、備品も購入していなかった。
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Research Products
(5 results)