2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13061
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
安原 正貴 茨城大学, 教育学部, 講師 (10738834)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反使役 / 再帰 / 事象構造 / 使役交替 |
Outline of Annual Research Achievements |
通言語的に、自発的に発生する事象は自動詞を用いて、外的原因により発生する事象は他動詞を用いて表現するのが一般的である。しかし、ドイツ語などを含むゲルマン語やスペイン語などを含むロマンス語の中には、形式的には再帰代名詞を伴う他動詞表現を用いて自発的に発生する事象を表すことができる言語が存在する。英語にはこのようなタイプの表現は存在しないというのが先行研究での一般的な見方である。本研究では、上記のような他動詞表現に似た、反使役的な意味を表す英語の再帰的他動詞表現を扱い、英語における再帰的他動詞表現の特性を明らかにするとともに、通言語的な比較を行うことを目的としている。通言語的な比較の観点から、本年度は日本語における再帰的他動詞表現の調査を行った。日本語にも再帰的な目的語を伴う再帰的他動詞表現が存在し、形式的には他動詞表現であるが、意味的には自発的に発生する事象を表す表現が存在する。例えば、「太陽が姿をあらわした」という表現は、形式的には再帰的な目的語「姿」を伴う他動詞表現であるが、意味的には「太陽の姿が現れた」という自発的な出来事を表している。昨年度までに行った英語における分析では、英語の再帰的反使役表現は基本的に、動作主の再帰的な行為を表すことのできる他動詞のみが反使役的な意味を表す再帰的他動詞表現に生起できることを論じた。本年度の研究では、日本語でも英語と同様に、動作主の再帰的な行為を表すことのできる他動詞のみが反使役的な意味を表す再帰的他動詞表現に生起できることを提案した。これにより、昨年度までに行った英語における分析が日本語における再帰的他動詞表現の特性の解明にも応用できる可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本務校での校務や教育活動等の業務が当初予定していたものよりも多忙となり、本研究課題の遂行に当てる時間を当初の予定よりも減らさざるを得なくなった。そのため、当初の予定よりも本研究課題の遂行がやや遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続き、反使役的な意味を表す英語の再帰的他動詞表現の特性の調査を行うとともに、他言語との比較対照研究をさらに進めていく予定である。今年度と同様に、日本語における類似表現の調査を内省判断やコーパスを用いて遂行していく。また、英語母語話者への聞き取り調査を重点的に行い、特に意味論的な観点から英語の再帰的他動詞表現の分析を遂行していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会等の現地開催が中止となり、旅費を想定していた研究経費の使用計画が無くなったため、次年度使用額が生じることになった。次年度も現地開催の研究学会は少なくなることが想定されるため、旅費に当てることを想定していた研究経費の一部は、文献調査等の費用として活用し、本研究課題をさらに進展させる予定である。
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