2021 Fiscal Year Research-status Report
Morphosyntactic factors behind de se: a contrastive study on Japanese and English
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20K13062
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松田 麻子 お茶の水女子大学, 外国語教育センター, 講師 (90848855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | De Se / 人称代名詞 / Indexicality / Point of View / Speech Act |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、人間言語に見られるDe Seという解釈の形態統語的要因を明らかにすることです。De Seは、話し手の態度表出のあり方に関わる概念で、言語の根幹をなす重要概念です。本研究は、特に日英語データの対照分析によって、「どのような形態統語的要因がDe Se解釈を可能にするのか、もしくは義務付けるのか」を確認しようとするものです。 2021年度は、前年度に着目した日本語の「自分」「自分たち」や英語の人称代名詞を超えて、両言語の多様なモダリティ表現に考察対象を広げていきました。その中で、De Se解釈には、Indexicality(指標性)(e.g. Schlenker 2003)やPoint of View(視点)(e.g. Speas and Tenny 2003)などの概念が深く関わっているが、De Se解釈という切り口でこれらの概念を整理・精緻化しようとする研究が十分に行われていないことがわかりました。このため、2021年度は、IndexicalityやPoint of Viewという概念とそれらに関わる統語素性・構造が、既存研究でどのように扱われてきたかを整理し、De Se解釈に関わる点(もしくは関わらない点)を抽出する作業に注力しました。その結果、Indexicality、Point of view、De Se解釈に横断的に関わる構造・素性と、それぞれの概念に固有の構造・素性が徐々に明らかになってきました。 この概念研究の成果は、論文として執筆します。また、日英語データ収集のためのインフォーマント調査で提示する例文、図表、写真(動画の可能性もあり)の準備や開発に活用する予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度後半から2021年度にかけて、De Se解釈に関わる日英語の経験的事実を段階的に把握する予定でした。具体的には、日本語母語話者と英語母語話者を対象としたインフォーマント調査(新型コロナウィルス感染状況を鑑み対面インタビュー形式からオンラインインタビュー形式に変更)を実施する計画でした。しかし、インフォーマント調査において対象者に提示する真偽値判断課題をより効果的なものにするためには、De Se概念のさらなる精緻化が必要であることがわかりました。また、De Seの義務性という解釈上の特性が明らかになりやすい例文・状況描写(図表・写真・動画)の開発には、さらなる考察が必要であることもわかりました。そのため、インフォーマント調査の調査方法の開発に予定以上の時間を費やしています。
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Strategy for Future Research Activity |
・既存文献に基づく理論研究では、De Seという概念を、Indexicality(指標性)、Point of View(視点)のような関連概念と比較し、その相対的位置付けや統語的特徴をさらに明らかにしていきます。 ・経験的研究(インフォーマント調査)は、理論研究の成果を検証するために行います。日英語いずれの母語話者のインフォーマント調査についても、形式を当初の対面からオンラインに変更する予定です。また、調査の一貫で実施する真偽値判断課題において使用する例文と状況描写のための図表・写真を慎重に検討・開発した上で実施します。図表・写真ではなく、動画を開発する可能性もあります。 ・国内外の研究者との意見交換・情報共有のための学会活動については、新型コロナウィルスの感染状況が許す限り、また、オンラインによる代替手段を用いながら続けていきます。 ・上記研究成果については、学会発表や論文執筆の形で公表していきます。
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Causes of Carryover |
2021年度は、国内外の新型コロナウィルス感染拡大により、関連分野研究者との情報共有目的で予定していた学会参加のための旅費の支出がなくなりました。また、理論的研究の成果を経験的研究(インフォーマント調査)により検証するには、さらに慎重な調査方法の検討・開発が必要となることがわかり、インフォーマント調査の実施を延期しました。そのため、調査対象者に支払う謝金の支出がありませんでした。 インフォーマント調査は、2022年度に実施する計画です。その際の謝金として次年度使用額を使用します。2022年度後半は、新型コロナウィルス感染状況が許す範囲で学会参加を再開し、2020-2021年度に予定していた対面での学会活動を補います。その際の旅費として、2021年度分として請求していた助成金と合わせて、次年度使用額を支出する計画です。また、英文論文執筆の際の校正費(ネイティブチェック)としても支出する計画です。
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