2022 Fiscal Year Research-status Report
Morphosyntactic factors behind de se: a contrastive study on Japanese and English
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20K13062
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
松田 麻子 和洋女子大学, 国際学部, 助教 (90848855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | de se / modality / indexicality / speech act / control / shifted indexicals |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、人間言語に見られるDe Seという解釈の形態統語的要因を明らかにすることです。De Seは、話し手の態度表出のあり方に関わる概念で、言語の根幹をなす重要概念です。本研究は、日本語や英語のデータを用いて「どのような形態統語的要因がDe Se解釈を可能にするのか、もしくは義務付けるのか」を確認しようとするものです。 2022年度は、前年度に着目したIndexicality(指標性)(e.g. Schlenker 2003)やPoint of View(視点)(e.g. Speas and Tenny 2003)などの概念が具体的に言語化されている現象として、日本語の埋込文における「-たい」(例:行きたい)「-よう」(例:行こう)「-ように」(例:行くように)「こと」(例:行くこと)や代名詞「自分」の振る舞いに着目しました。具体的には、上記の各要素が埋込文に出現することが、義務的de se解釈の派生にどのように影響を与えるかを確認するために、日本語母語話者を対象とするインフォーマント調査を計画・実施しました(2022年8月)。 その成果の一部を30th Japanese/Korean Linguistics Conferenceにてポスター発表しました(2023年3月)。そこでは、特に日本語の語尾「-たい」と「-よう」に着目して、こういった要素が持つIndexicality(指標性)・Modality(モダリティ)・義務的de se解釈の関係を明らかにしました。また、英語の義務的コントロール構文の一部にも、その分析を拡張することが可能であると示唆しました。この発表の内容は、当該学会のプロシーディングス論文として執筆・投稿予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度前半には、本研究の中核となるインフォーマント調査に必要となるテスト文と状況描写イラストの開発を終え、倫理審査(和洋女子大学「人を対象とする研究に関する倫理審査」)においても順調に調査実施の承認を得られました。その結果、今年度8月(2022年8月)には調査を実施し、今年度中(2023年3月)にその成果を学会(30th Japanese/Korean Linguistics Conference)にて報告することができました。 ただ、今回の調査により新たに発覚した理論的問題点や調査実施上の改善点を補う補足的追加調査が必要であると判断します。また、今回研究対象とした日本語要素がどのようにde se解釈を派生させているのか、さらに具体的かつ精緻な理論研究が求められます。そのため、進捗状況としては「やや遅れている」と自己評価します。
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Strategy for Future Research Activity |
・理論研究においては、De Seという概念を派生させる形態統語構造を、既存文献に照らしてさらに整理・精緻化していきます。近年、統語論・意味論領域において注目が集まるIndexicality(指標性)、Point of View(視点)、Speech Act(言語行為)の観点から書かれた広範な文献を参照し、それらの概念とde se概念の関連性を明らかにしていきます。さらに、義務的de se解釈を派生させる典型的なコントロール構文の統語構造にも着目し、そこから得られる示唆を研究に反映させます。 ・経験的研究としては、今年度実施したインフォーマント調査から明らかになった理論的問題や調査実施上の改善点を注意深く検討し、補足的追加調査を慎重に計画・設計・実施します。 ・引き続き、国内外の研究者と意見交換や情報共有するために、学会活動等に積極的に関わり、研究の発展に活かしていきます。 ・上記研究成果については、学会発表や論文執筆の形で公表していきます。
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Causes of Carryover |
2022年度は、前年度に引き続き、国内外の新型コロナウィルス感染拡大の影響で、各種学会のオンライン開催が増え、学会参加のための旅費の支出が想定を下回りました。次年度使用額は、予定している補足的追加インフォーマント調査の謝金に使用します。また、国内外の学会が対面で実施されることが増えてきているため、学会参加のための旅費としても使用します。さらに、英文論文執筆の際の校正費(ネイティブチェック)としても支出する計画です。
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