2023 Fiscal Year Research-status Report
Morphosyntactic factors behind de se: a contrastive study on Japanese and English
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20K13062
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
松田 麻子 和洋女子大学, 国際学部, 助教 (90848855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | de se / modality / indexicality / speech act / control / shifted indexicals |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、De Seと言われる意味解釈を派生させる形態統語的要因を明らかにすることを目的としています。De Seとは、自省的態度とも訳され、話し手の態度表出のあり方に関わる重要概念です。具体的に本研究では、「どのような形態統語的要因がDe Se解釈を可能にするのか、もしくは義務付けるのか」を、日本語・英語のデータを用いて確認しようとするものです。 2023年度前半は、前年度に実施した日本語母語話者を対象としたインフォーマント調査の結果を分析し、論文として公表しました(Japanese/Korean Linguistics 30, 2023年9月)。そこでは、特に日本語の「-たい」(例:行きたい)や「-よう」(例:行こう)といった形態素がDe Se解釈を義務的に派生させる可能性について論じ、こうした形態素が持つIndexicality(指標性)、Modality(モダリティ)、義務的De Se解釈との関係を明らかにしました。また、対応する英語の義務的コントロール構文の分析にも、日本語データから得られた示唆を拡張できる可能性を示しました。 2023年度後半は、英語の一人称複数代名詞の“we”に着目し、通常は結合複数(associative plural; “I”とその他の人々)として解釈される“we”が、特定の埋込文に出現する際には累加複数(additive plural; 複数の“I”)と解釈される可能性について研究を進め、論文を執筆しました(未発表:2024年度発表予定)。今後は、累加複数の“we”とDe Se解釈との関連性を明らかにしていく予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に実施した日本語母語話者を対象としたインフォーマント調査において、義務的にDe Se解釈をもたらす日本語の形態素をある程度予測でき、その点について論文として発表することができました。ただし、今回論文で扱わなかった形態素(「自分」「-ように」「-こと」)などについては、インフォーマント調査から予測可能な結論を導き出すことができず、今後は研究方法を見直し、内省や文献調査を中心にさらなる研究を続けていく必要があります。 また、今年度から着手した累加複数としての英語の一人称複数代名詞“we”の研究については、De Se解釈との関係を明らかにしていく必要があります。 そのため、進捗状況としては「やや遅れている」と自己評価します。
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Strategy for Future Research Activity |
・日本語母語話者を対象としたインフォーマント調査では、「自分」「-こと」「-ように」などの形態素とDe Se解釈の関係を予測可能な形で提示することが困難であることがわかりました。理由は、インフォーマントによる文の解釈がpreference(指向)によるものか義務的なものかの判断が難しいということにあります。今後は研究方法を内省と文献調査を基本とした分析に変更します。 ・英語の埋込文に出現する累加複数としての“we”とDe Se解釈の関連性については、文献調査により研究を進め、必要であれば英語母語話者を対象としたインフォーマント調査を実施します。 ・理論研究においては、De Se解釈の派生要因となる形態統語構造を明らかにするため、既存文献の調査をさらに進めていきます。 ・引き続き、国内外の研究者と意見交換や情報共有するため、学会活動に積極的に関わり、研究の発展に活かしていきます。 ・上記研究成果については、学会発表や論文執筆の形で公表していきます。
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Causes of Carryover |
2023年度は、前年度実施したインフォーマント調査の結果について、および、新たな研究として英語の“we”について、論文執筆という形で研究成果をまとめたため、学会発表は行いませんでした。そのため、学会参加のための旅費が発生せず、次年度使用額が生じました。次年度使用額は、文献研究のための図書の購入、英文論文執筆の際の校正費(ネイティブチェック)、学会参加のための旅費として使用する計画です。
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