2020 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Syntactic Study of So Anaphora: A View from Extraction Possibilities
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20K13064
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
坂本 祐太 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任講師 (40802872)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 照応現象 / 移動 / 生成文法 / 統語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、研究実施計画の【1】so照応が示す抜き出しの可能性のパターンに関する言語横断的記述を中心に研究を行った。まず、スペイン語の母語話者とのミーティングを通じてスペイン語のdo so (hacer asi)からの抜き出しの可能性を検討し、「wh移動と受動化移動による抜き出しは不可能である一方、空演算子移動による抜き出しは可能である」というパラダイムが明らかになった。これは、日本語を中心とした東アジア言語に観察される項省略現象と同一の抜き出しのパターンであり、東アジア言語とスペイン語という類型論的に離れた言語において同一の文法操作が利用可能である可能性が浮き彫りとなった。また、上記の研究と関連してドイツ語の3人称中性代名詞esからの抜き出しの可能性に関しても考察を行った。先行研究で観察されていたデータに加えて、受動化移動及び量化詞繰り上げを介した抜き出しの可能性を検討し、「wh移動や受動化移動をはじめとした音声に影響を与える顕在的な抜き出しに関しては不可能であるが、空演算子移動や量化詞繰り上げをはじめとした音声に影響を与えない非顕在的抜き出しに関しては可能である」という経験的一般化が明らかになった(研究の一部はすでに国内学会で口頭発表を行っている)。この一般化も、上記のスペイン語のdo so及び東アジア言語における項省略の抜き出しの可能性と合致するものであり、3つの文法現象を理論的に統一して扱うことができる可能性が浮き彫りとなった。この他にも、現在中国語の節so照応に関して、ネイティブスピーカーとのやりとりを通しながら、抜き出しの可能性に関して検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は2年間の研究助成を通して【1】「so照応が示す抜き出しの可能性のパターンに関する言語横断的記述」【2】「so照応が示す抜き出しの可能性を説明する理論構築」の2つを行うことを目的としている。初年度において、上述したように【1】に関してはある程度研究が順調に進行しているため、(2)の区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、【1】の記述的研究を進めるのと並行して【2】「so照応が示す抜き出しの可能性を説明する理論構築」に重点を置いて研究を行う予定である。推進方策に関しては研究実施計画に基づき、①「包括性条件の下でのPFにおけるso照応の音声的挿入」②「so照応の補部Ⅰ位置に完全な統語構造を想定した上での、当該補部の義務的な音声的削除」の2つのアプローチを比較検討し、両者からどのような経験的予測の違いが生まれ、どちらのアプローチが経験的及び理論的に支持されるのかについて考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、海外出張及び国内出張を行う機会がなくなり、次年度使用額が生じてしまった。この額に関しては、次年度の出張費用、及び研究にまつわる書物などを含めた研究環境の向上に貢献する物品の購入に充てる予定である。
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