2020 Fiscal Year Research-status Report
英語there構文の一致・定性効果・非対格性制約に関する統一的説明に向けた研究
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20K13068
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
本田 隆裕 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (20756457)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 虚辞 / 格 / ラベル / 派生的θ標示 / 定性効果 / 述語名詞 / 強数量詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、there構文の連結詞(associate)に見られる定性効果と述語名詞に見られる定性効果の関連を調査した。本研究では、定性効果が見られる名詞句に共通するのは格を付与されないことであるという仮説を立てているが、畠山 (2004)が指摘する「*犯人が太郎だ。」という日本語のデータがこの仮説を支持する証拠になり得るという分析を『神戸女子大学文学部紀要』に掲載の論文にまとめた。一方、定性効果の例として、先行研究ではthere構文の連結詞の位置にeveryなどの強数量詞が出現不可能であることが指摘されているが、あらたに動詞句外存在構文の連結詞の位置に強数量詞が出現する例を作成し、英語母語話者に容認性を調査したところ、予測に反して容認性が高いことがわかった。本研究の仮説では、動詞句外存在構文の連結詞位置にも強数量詞は出現できないと予測するため、今後、この仮説の修正を行うか、または動詞句外存在構文の特異性を何らかの方法で説明する必要があると考えられる。 また、令和2年度はCOVID-19感染拡大の影響により、当初研究に充てられると思われた期間のほとんどが、遠隔授業への対応やその他学内で急遽必要となった業務への対応、子の保育所の登園自粛要請による家庭での保育などのために充てざるを得なくなり、計画通りに研究を進めることができなかった。このため、当初の予定では研究期間を3年間としていたが、最終年度に研究期間の1年間延長を申請する予定である。 ただし、本研究の交付内定前に、研究の準備段階として執筆を進めていた論文が日本英語学会のEnglish Linguistics 37巻に採択され、令和2年度中に論文が刊行されており、本研究の課題である英語there構文の一致・定性効果・非対格性制約については、この論文で一定の説明を与えることができたため、研究そのものは進捗していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上記のように、令和2年度はCOVID-19感染拡大という研究計画書作成の段階では全く予測できなかった事態に遭遇し、想定していなかった学内での業務や家庭での保育などに急遽対応しなければならず、研究に充てられる時間を確保できなかった。また各種学会の開催状況も見通せなかったため、学会発表についても応募を見合わせていた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、最終年度に研究期間の1年間延長を申請する予定である。ただし、令和2年度に研究を進める予定であった定性効果に関する研究は、上記のように当初の予測に反するデータが得られたため、一旦保留し、令和3年度については当初の予定通り非対格性制約に関する研究を進め、there構文に出現可能な動詞のタイプについて英語母語話者への調査やコーパス調査を行う予定である。定性効果については、研究期間を延長し、最終年度の令和5年度に他の研究結果を踏まえてあらためて研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
世界的な混乱の中、今後の物流状況がどうなるか読めなかったため、令和2年度については研究期間内に必要となる電子機器を揃えておくことを優先したが、一方で上記のような理由で研究そのものを十分に進められず、先行研究調査に必要な書籍などをあまり揃えることができなかった。また、参加した学会もオンラインで行われたため、旅費は一切支出しなかった。令和3年度は研究に必要な書籍等の購入に研究費を支出したいと思う。なお、最終年度に研究期間の1年間延長を申請する予定であるが、最終年度になる予定の令和5年度に研究発表を海外で行うことも想定して、ある程度の予算を最終年度まで繰り越したい。令和5年度における旅費が現在の旅費の相場とは大幅に異なる可能性もあり得るので、その点も考慮に入れながら残りの予算の内訳を検討したい。
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Research Products
(1 results)