2021 Fiscal Year Research-status Report
英語there構文の一致・定性効果・非対格性制約に関する統一的説明に向けた研究
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20K13068
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
本田 隆裕 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (20756457)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 概念意味論 / 統語論 / there構文 / 非対格性 / 起動相 / 能格動詞 / 非対格動詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、there構文に出現可能な動詞が非対格動詞に制限されるという、there構文の非対格性制約について研究を進めた。先行研究でもよく指摘されることであるが、この場合の非対格動詞については、breakのように使役交替を示す能格動詞などは該当せず、他動詞用法が存在しないappearなどの「純粋な」非対格動詞に限定される。統語構造上は、能格動詞と純粋な非対格動詞は類似したものとみなされることが多いが、両者の統語構造の違いを指摘している先行研究も踏まえ、この2つのタイプの統語構造の違いについて分析した。次に、対応する他動詞用法が存在せず、この点では純粋な非対格動詞に分類されると思われるdieやvanishといった動詞がthere構文に出現不可能である理由を検討した。一般に、出現や存在といった意味を表す動詞のみがthere構文に出現可能であると言われるが、このような意味的特徴と統語構造との対応関係を探ることで、dieやvanishといった状態変化動詞がなぜthere構文に出現不可能であるのか検討した。具体的には、藤田・松本 (2005)で提案されている3層分裂動詞句分析を発展させ、動詞句の構造として新たに4層分裂動詞句構造を提案し、動詞の概念構造に基づき、結果目的語(effectum object)には与えられないθ役割が被動目的語(affectum object)には与えられているという仮説を立てた。状態変化動詞の項は被動目的語であり、appearやexistといった動詞の項である結果目的語には与えられないθ役割を付与されていることが、状態変化動詞がthere構文に出現不可能な統語的理由であるという説明を試み、『神戸女子大学文学部紀要』に掲載の論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度の前期は論文執筆に必要な文献調査など、順調に研究を進められていたが、年度の中頃から当初予想できなかった学内の複数の問題への対応に急遽時間を取られ、後期の期間は十分な研究時間を確保できなかった。また、「研究実績の概要」に記載の通り、状態変化動詞のθ役割に関する分析は本研究課題申請時には想定していなかった新たな視点であり、この点では有意義な発見であったが、その分析を支持するさらなる証拠として作例した英文に対する英語母語話者の文法性判断が、こちらの予測とは異なる反応であったため、必要な英文の作例や仮説について再検討が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の報告書にも記載したが、本研究課題については、研究開始時より当初は予測不可能であった様々な問題が生じたため、研究計画を1年間延長することを考えている。令和3年度の研究で、状態変化動詞のθ役割に着目したが、この点については先行研究でそれほど触れられていないテーマであると思われるので、この点について重点的に研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載したように、令和3年度の後期は当初予想していなかった問題の対応に追われたため、十分な研究時間を確保できなかった。また、本研究課題申請時には気づいていなかった新たな着想が得られたため、購入する文献などを再検討したいと考えている。今後は必要な文献の購入や英文校閲などに予算を使用したいと考えているが、旅費の支出についてはこの先の状況が見通せないため、現時点では計画を立てることができない。
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Research Products
(1 results)