2022 Fiscal Year Research-status Report
英語there構文の一致・定性効果・非対格性制約に関する統一的説明に向けた研究
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20K13068
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
本田 隆裕 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (20756457)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 同族目的語構文 / 被動目的語 / 結果目的語 / 自他交替 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、前年度に着目した結果目的語と被動目的語の区別とthere構文との関連性についてさらに研究を進めた。前年度の研究では、結果目的語と被動目的語では統語的な基底生成の位置が異なるという仮説を立て、there構文に出現可能な動詞のタイプについて説明を試みたが、令和4年度はこの仮説が同族目的語の出現可否や自他交替などにも関係している可能性を指摘した。本研究の中心的テーマの一つである非対格性制約について特に明らかにしたいと考えているのは、dieやvanishなど対応する他動詞用法を持たない非対格動詞がなぜthere構文に出現不可能なのかということであるが、dieという動詞に関しては、apppearのような動詞と異なり、同族目的語構文に出現可能であるという特徴が見られることに着目した。この点を踏まえ、同じ非対格動詞であってもその唯一の項が結果目的語であるのか被動目的語であるのかという違いが、there構文への出現の可否と関係しているのではないかという仮説を新たに立てた。また、bakeなどの料理動詞は自他交替が見られる動詞であるが、結果目的語を伴うと自動詞用法が容認不可になるという点で、appearなどの動詞とは正反対の性質(前者は他動詞用法のみ、後者は自動詞用法のみ可能)を示すが、この事実も結果目的語と被動目的語では統語的な基底生成位置が異なるという本研究の仮説を支持する証拠であると考えられる。これらの成果については『神戸女子大学文学部紀要』第56巻に論文としてまとめた。ただし、同族目的語構文とthere構文の関連に気づいたのが、論文執筆の直前であったため、同族目的語構文の先行研究調査は不十分であった。この点を、1年延長した研究期間で調査していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度の報告にも記載したが、コロナ禍に入ったタイミングと研究期間が始まったタイミングが完全に一致しているため、さまざまな要因で研究にあてられる時間が当初計画よりも少なくなってしまった。これについては少しずつ遅れを取り戻しつつあるが、まだ明らかにできていない疑問点や、新たな研究対象の発見もあり、当初の計画から1年研究期間を延長することを申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、there構文の一致・定性効果・非対格性制約をテーマとしているが、研究計画書提出後から研究開始までの間に刊行されたEnglish Linguistics掲載の論文で一致と定性効果についてはある程度の研究成果をすでにあげることができており、この研究に基づき、非対格性制約についてさらに明らかにしていきたい。特に、非対格性制約に関する研究はthere構文以外の構文との関連性も見えてきたことから、さらなる研究の発展が期待できると考えられる。
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Causes of Carryover |
他の欄にも記載した通り、研究開始とコロナ禍の開始のタイミングがほぼ重なったことや、その他当初は予期できなかった問題への対応に追われ、研究計画を少しずつ遅らせざるを得なかった。また、令和4年度に新たな研究の視点を得ることができ、その研究をさらに進めるために当初の計画を変更した。令和5年度はこれまでできていなかった学会応募を行い、他の研究者から意見をもらう機会を得たいと考えており、研究の総まとめを行いたい。そのため、旅費や研究に関連する図書、電子ジャーナルの購入、さらに研究資料を効率的に閲覧するためのタブレットの購入などに費用をあて、研究の最終報告をする準備を整えたい。
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Research Products
(1 results)