2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13069
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Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
森下 裕三 環太平洋大学, 次世代教育学部, 准教授 (30734305)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーパス / 英語 / 直示性 / 移動表現 / 分布意味論 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模データであるコーパスを利用しながら,可能な限り客観的に直示性という意味の特殊性を明らかにするという目的から,当該年度は意味分析を手作業による方法から自動的な手法へと変更した。具体的には,計算言語学などで以前より広く利用されてきた分布仮説 (distributional hypothesis) に基づく手法を採用し,英語の経路動詞および直示的経路動詞を分析した。分析対象している語の周辺に生起する語の分布のみを手がかりに,それぞれの語の性質の違いを導くというもので,構造主義言語学および20世紀中頃の哲学的な分析を背景とした分析手法である。任意の語の周辺に共起する語の分布の違いを統計的に分析し,計量的にそれぞれの語の意味の類似度を計算するという手法である。同じコーパスを利用し,同じ手続きで分析することで,どの研究者も同じ結論を得ることができるという点において再現性の高い分析手法のひとつである。
このような手法によって,arrive, cross, depart, enter, escape, leave, pass, そして reach という8種類の経路動詞,ならびに come と go という2種類の直示的経路動詞を分析した。結果として,直示的移動動詞である come と go が他の8種類の経路動詞と比較して,非常に高い類似度を示した。今後,この結果をさらに詳細に分析しつつ,理論言語学での研究成果とあわせて分析を進めていくことで,直示性という性質が他の経路概念とどのように異なるのかを明らかにすることにつながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論言語学の研究において,多くの場合,意味などの分析が研究者による手作業となり主観的なものになるという大きな課題をいかに克服するかというのが,本研究課題の取り組むべき問題のひとつであった。このような問題に対して,計算言語学的な手法を採用することで,分析から研究者による主観を可能な限り排除することができるという知見を得ることができたという点においては研究は進んだと言える。しかし,膨大なデータの分析を詳細に見直し,理論言語学的に意義のある主張をするためには,やはり膨大な時間を要するため計画通りに進んでいるとは言い難い状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めるべき方向性はかなり明確になっており,計算言語学で利用されている客観的な分析手法から得られた知見をいかにして理論言語学的なことばで翻訳していくのかというのが今後の大きな課題となる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行にともない,国内外での学会参加がすべてオンラインとなったため,申請書執筆当時に予定していた旅費がまったく使えずにいるために次年度使用額が発生している。今後,新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が落ち着き,国内外での学会に参加できるようになることで予算は計画通り執行可能になる。
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