2021 Fiscal Year Research-status Report
Direct Generation Analysis of Fragments of Self-Pronouns
Project/Area Number |
20K13070
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
永次 健人 長崎総合科学大学, 共通教育部門, 講師 (60779768)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 省略 / 文断片 / 直接生成 / Self代名詞 / 言語インターフェイス / 英語 / 日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では具体的な研究テーマとして、テーマI(経験的データの拡張)、テーマII(self 代名詞に対するLogophoricity 条件の検証)、テーマIII(直接生成分析へのインターフェイスアプローチの研究)を立てていた。2020年初頭から始まった新型コロナ感染症のパンデミックによる研究環境の予想されなかった変化により、昨年度に当初の研究計画を変更し、研究期間を延長した。また、研究テーマの順番を変更し、作年度中にテーマIIIを完遂し、今年度にテーマIとIIへ移行することにした。しかし、昨年度中では、テーマIIIに関する研究成果の完成と公表の準備に時間を要し、テーマII・IIIはあまり進められなかった。 テーマIIIについては、self代名詞のlogophoricな振る舞いについてJackendoffの三部門並列モデルに基づく新しい分析を提案し、日本英文学会九州支部大会で発表した。これは主担者のこれまでの分析を修正したもので、anaphorとlogophorの両方を統一的に説明する意味-統語対応規則を新しく提唱した。また、三部門並列モデルについて、従来の表層的な統語構造と意味構造だけでは不十分であり、項構造を扱うレベルが意味-統語インターフェイスに必要であることを示唆し、Jackendoffのモデルの見直しの必要性を示した。 また、直接生成分析の文断片一般での妥当性について検証する過程での成果を日本言語学会第162回大会において発表した。さらに、文断片研究とその意義について、広く知ってもらうため、言語学フェス2022において研究紹介のポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究内容を成果としてまとめ発表する準備に時間がかかり、今年度に行う予定であった、研究テーマIとII(文断片において束縛条件A違反が許容される条件にかんするデータの拡充と一般化)を進めることができなかった。今年度においても、新型コロナ感染症の影響は大きく、感染拡大時期における学校封鎖・オンライン授業への移行による教育活動・学内業務の負荷が研究計画の実施に影響を与えたことは否定できない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目標の中で、まだ完遂されいない下記のものを実施する。①以下の要素を組み合わせ、作例ごとに束縛条件Aの違反が許されるかを検証する。 代名詞の種類:一人称・二人称・三人称・単数・複数・each other 文法役割:subject, direct object, oblique object 統語的位置:[主節 ... antecedent ... self ...] / [主節 ... self ... antecedent ...] / [主節 ... self ... ] / [主節 ... antecedent ... [補文 ... self ...]] / [主節 ... self ... [補文 ... antecedent ...]] / [主節 ... [補文 ... self ...]] ②Logophor が何を先行詞に取れるかには言語差があるが、記述的研究では Speaker > Hearer > Center of Thought > Subject of Perception の含意的階層性に従うとされている。Self 代名詞の文断片がこの階層性のどの範囲まで指示可能を検証する。また、Kuno (1987) は self 代名詞を含む英語の照応表現の意味・語用論的条件を詳細に示しているが、それらが self 代名詞の文断片にも適用されるかも検証する。これらの結果を前年度までの理論的研究の成果から検証する。
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Causes of Carryover |
今年度も新型コロナ感染症の感染拡大が継続したことの影響により、学会や研究会などでの出張がなくなり、旅費支出が一切生じなかった。また、研究成果を英語論文等で公表するための英文校正費用の多額の支出も見込んでいたが、論文作成の遅れにより、こちらの支出も生じなかった。これらの理由と、何よりも、研究計画そのもの遅れにより、予定していた支出を大きく下回った。 次年度は、国際誌での研究成果の発表のため論文投稿を行うので、英文校正費、論文掲載費などの経費支出を見込む。また、新型コロナ感染症を巡る状況の変化により、社会活動の正常化が期待され、それに伴い、学会出張などでの旅費の支出が予想される。
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