2022 Fiscal Year Research-status Report
What can psych adverbs tell us about language universals and language variation?
Project/Area Number |
20K13071
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
三浦 香織 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (90633628)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心理副詞の認可 / 極性 / 日本語・韓国語 / 動詞句 / 普遍文法・個別文法 / 否定の作用域 |
Outline of Annual Research Achievements |
通言語的に、動作主が動作の最中や終了時に対象物に対して抱く主観的な判断を述べる表現が存在する。例えば、日本語では「(例1)私は論文を【興味深く】読んだ。」の【興味深く】のような形容詞連用形の表現である(以下、「心理副詞」)。本研究は、このような心理表現が文中で他の要素と持つ関係について記述し、複数言語の関連事実を比較することで、自然言語の動詞句の普遍文法と個別文法の解明を狙いとする。
令和4年度の主な研究実績は2点ある。1点目として、日本語の心理副詞は基本語順の平叙文で否定的に理解しにくい傾向にあることから肯定極性的な性質を示す一方(令和3年度の実績)、必ずしもそうでない場合があることがわかった。「日本語の心理副詞は肯定極性を示す傾向にあり、大きく3種類に大別できる」ことを確実に理解するために、否定極性表現(「誰もーない」、「何もーない」、「しかーない」)との共起関係や「全員ーない」の文脈で全否定か部分否定の解釈が得られるか、などを検証した。「(例2)太郎しかその本を興味深く読まなかった」のような文の容認性を数名の母語話者に確認したところ、心理副詞を常に否定的に捉える母語話者がいる一方で、そうではない母語話者も確認された。先の例2を否定的に解釈する母語話者の認識では、心理副詞が局所的な否定の作用域に収まっていると考えられるが、そうでない場合は、作用域の外にあると考えられる。生成文法の標準的な否定の作用域の構造関係を前提すれば、心理副詞の併合位置は少なくとも2箇所は存在すると言える。
2点目として、韓国語の心理副詞と否定の関係について基礎的なデータを収集できた。日本語と異なり、韓国語の心理副詞は基本語順の平叙文で否定的に解釈される傾向にある。一方で、「思う」や「sayngkakhay」などの認識動詞文が否定された場合、両言語では心理副詞の否定の作用域に違いがあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に目標としていた日本語の心理副詞の極性に関する論考は専門書籍にまとめることができた。また、日本語の心理副詞の内部構造についても、専門知識提供者と共著で国際学会で発表できた。韓国語の心理副詞文や否定表現についても、専門知識の提供を受けるとともに、数名の母語話者から容認性判断を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、心理副詞と否定極性の関係性について現在執筆中である本の章を完成させることを目標にする(研究協力者との共著)。さらに、昨年度末に国際学会で発表した内容を論文にまとめる。また、韓国語の母語話者から、心理副詞と否定表現の関係性についてより詳細な容認性判断を収集し、韓国語と日本語の統語構造の比較を確実に実行できるようにする。本年度の研究成果は秋の国内の学会で発表するように応募を進める。
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Causes of Carryover |
次年度の使用額が発生した最大の理由として、R3年度までの研究遂行がCovid-19の社会的な影響をうけたことである。特に国内外の学会が全てオンラインとなり、当初計上していた旅費を実際には使用できておらず、各年度の残額が今年度まで累積している。
令和5年度は韓国語についてより詳細なデータを収集する。国内の研究機関に在籍する韓国人研究者に協力を依頼し、韓国での実施が可能な場合はそちらを実施するが、難しい場合は、カナダにいる韓国語母語話者の研究協力者に相談し、被験者を募る。
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