2023 Fiscal Year Research-status Report
What can psych adverbs tell us about language universals and language variation?
Project/Area Number |
20K13071
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
三浦 香織 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (90633628)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心理副詞の認可 / 尊敬語化 / 述語と付加詞 / 否定の焦点 / 非顕在的な移動 / 普遍的な性質とパラメーター |
Outline of Annual Research Achievements |
R5年度は主に日本語における心理表現の認可について理論化をおこなった。第一に、心理表現が認識動詞と共起した場合と一般動詞と共起した場合では基底構造が異なることを提案した。認識動詞の場合は心理表現は小節を形成できる述語であるが、一般動詞の場合は付加詞である。後者の統語構造や意味解釈については先行研究の調査が手薄であるため、この部分を明らかにした。はじめに、心理表現は主節動詞と分離した節を構成できるのかを調査した結果、無理であることがわかった(「太郎は本を面白く読んだ」→「*太郎は面白かったが、本を読んだ」)。二次述語である描写述語はこれが可能である(「太郎は裸足で走った」→「*太郎は裸足であったが、走った」)。次に、尊敬語の接辞をもつ心理表現が主動詞の目的語や主語を叙述の対象にできるかどうかをテストした。その結果、描写述語は可能であるが(「学生は山田先生を意識不明のご状態で運んだ」)、心理表現はできなかった(「*学生は山田先生をご印象深く語った」、「*山田先生は学生をご印象深く語った」)。次に、心理表現は否定の焦点を形成できないことが明らかになった(「太郎はその食事を美味しく食べなかった」→「*太郎は食事をしてそれを美味しいと思わなかった」)。描写述語はこれが可能である(「太郎は裸足で走らなかった」→「太郎は靴や何かを履いて走った」)。次に、擬似分裂文を用いて、心理表現の基底位置は動詞句(vP)であることを明らかにした。しかし、これは問題である。心理表現は動詞句に併合しながらも否定の焦点になれないのである。この事実から、心理表現は主節の主語に「経験者」の解釈を付与するために、[Spec,TP]まで非顕在的に移動すると提案した。心理表現が常に「主語指向」的な解釈を受けるのはこの移動のためであると考える。また、心理表現が肯定極性を示すという昨年度の発見はこの部分に連関する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年のCovid-19の感染拡大で情報収集やデータ収集が思うようにいかなくなったことが、いまだに大きな要因となっているが、その後、海外渡航が可能になっても海外でのデータ収集や学会発表が思い通りに進まなかったのも事実である。特に、韓国語の二次述語や付加詞の事実について代表者の知識が欠けていることや、データ収集の方法が各言語の母語話者で異なることなどが要因である。また2022年から現在に至るまで、本務校において管理職を任されていることも遅れの要因の一つとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
先に提示した研究成果と遅れの原因を考慮し、期間延長を申請した。残された課題としては、韓国語の心理表現についてより詳細に調査を進めることである。とりわけ、韓国語の描写述語が日本語のそれと同じような統語構造や意味解釈を得られるのかを調査し、韓国語の心理表現が一般動詞と共起する際、述語なのか、付加詞なのかを見極める必要がある。その後、描写述語と心理表現の否定の焦点の形成の仕方に違いがあるのかどうかを調査し、否定のスコープについて普遍的な構造を立てることが可能なのかどうかを吟味する。これまでの調査では、一部で違いがあることがわかっている。さらに、心理表現の基底生成の位置を調査し、韓国語でも心理表現は非顕在的な移動を必要とするのかどうかを議論する。これらの研究を推進するには背景にある韓国語の文法全般を理解する必要があるため、本研究が終了した以降も継続して調査を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2019年のCovid-19の世界的な流行で、海外での研究活動が思うように進まなかった。とりわけ、関連学会での発表の機会を得ることができず、そこでの新たな人脈作りも当初期待していた通りには進まなかった。この事態は未然に回避することが出来ない、止むを得ない状況であったと考える。それでもオンラインで学会や研究会に参加し、研究の拡充に集中した結果、コロナ禍でも学会に参加したり、成果報告を続け、最近は研究テーマに関する興味深い事実も出てきた。これは当初期待していた以上の成果であった。しかし、事前に計画していた内容の3分の1はまだ活動を完了できていないため、今年度期間の延長をお願いした次第である。 【使用計画】 2024年 4月から6月 現在執筆中の論文の最終修正、国内研究打合せ旅費(神戸)、韓国語文法の文献購入(基礎知識構築のため); 2024年 7月から9月 国際学会発表準備、英文校閲、韓国語文法の文献購入(基礎知識構築のため); 2024年 10月から12月 国際学会参加旅費(AUS)、国内研究打合せ旅費(神戸); 2025年 1月から3月 論文執筆
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