2021 Fiscal Year Research-status Report
Argument construction of Japanese university students in academic essay writing
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20K13091
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
嶼田 大海 青山学院大学, アカデミックライティングセンター, 助教 (10780140)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学術的文章 / 大学教育 / 意見構築 / 参考文献の活用 / 論理的・批判的思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学生の学術的文章における論証構造とその参考文献の活用について分析を行った。先行研究におけるレポートや論文の論証構造の分析には、 Toulmin Model(1964)が援用されることが多いが、当該モデルでは根拠(Data)および論拠(Warrant)の数、種類とそれらの位置関係が固定的である(に見えやすい)こと、また根拠自体への裏付け(Backing)を含む論証の視点が省かれていることなどから、本分析ではより汎用的な論証の枠組み(たとえば、野矢2006;倉田2021)を用いて分析を行った。加えて、学術的文章では反証可能な客観的根拠(および論拠)を引用しながら意見構築を行うことが求められ、収集した参考文献を批判的に吟味した上で、自らの文章の目的に応じて効果的に活用することが重要になる。そこで、本分析においても文章の論証構造だけでなく、論証の中で参考文献がどのように用いられているかを確認した。収集した文章を分析した結果、段落レベルにおける個別の論証では、一つの主張に対して複数の参考文献(書籍と辞書、新聞とWebサイトなど)を用いたり、文献の引用がない場合でも適切なアナロジーによって根拠から主張を導出したりと複数種の論証パターンが確認された。しかし、こうした論証の頑健さの程度は段落によって大きく異なっており、十分に強い論証が組まれている段落がある一方で、他の段落では未確認の根拠や個人的な見解から直接主張を導こうとする傾向も見られ、段落間で論証の頑健さに偏りが見られた。また、たとえ段落レベルの部分的な主張が十分に強い論証を持っていたとしても、それ(ら)が全体の主張を効果的に支えられていないケースも少なくなかった。そのため、分析にあたっては段落レベルの論証と全体の主張に対する論証の強さにはある程度相関はあるとしても、相互のサポート関係は注意して評価することの必要性が窺われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた継続的な課題への取り組みとインタビューの協力者の確保が困難な状況が続いており、十分な文章およびインタビューデータが収集できていないことが研究進捗の遅れの大きな原因である。また、先行研究の再検討の過程で参考文献の使い方だけでなく、その論証構造についても併せて分析する必要性が生じてきたことも分析の方向性を修正する背景となっており、この点も研究の進捗に影響を与えてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
継続的な課題への取り組みとインタビューへの協力者の確保が困難となっている一方で、学術的文章(レポート)のデータ収集の見込みが立てられている。そのため、文章における論証および参考文献の活用に焦点を当てたテキスト分析を優先して進めることを検討している。もちろん、上記の分析過程でインタビューへの協力者を並行して進め、インタビューデータが得られた場合には、テキスト分析の結果と統合して考察を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた継続的な課題への取り組みとインタビューの協力者の確保が困難な状況が続いていることから、当初研究費より支出を予定していた研究協力者への謝金、およびインタビュー音声の文字起こし費用の計上が2021年度にできなかったため次年度使用額が生じてしまった。また、新型コロナウイルス感染症による影響で関連学会の開催がオンライン(場合によっては、中止)となっていることで旅費の未使用が出てしまった。 次年度はインタビューへの協力者の確保ができた際に協力者への謝金およびインタビュー音声の文字起こし作業費(業者委託)を支出する予定である。また、国内学会の現地開催も増えてきていることから(現地参加の場合には)そのための旅費の申請を予定している。加えて、研究方法の一部変更に伴い、テクストの論証分析に関する国内外の研究資料を参考にするためその調達費の支出を予定している。
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