2020 Fiscal Year Research-status Report
文脈からみた「もの」を構成成分に持つ機能語の記述的研究
Project/Area Number |
20K13094
|
Research Institution | Kobe University of Welfare |
Principal Investigator |
松下 光宏 神戸医療福祉大学, 人間社会学部, 准教授 (50846037)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 反語 / 「Pものか」 / 「Pか」 / 文脈 / 用法 |
Outline of Annual Research Achievements |
「もの」という形式が単独または他の語と複合した形式で用いられ、文法的な機能を持つようになった機能語のうち、今年度は反語を表す形式である「ものか」の分析を主にすすめた。 「Pものか」のPには直前の相手の発話に出現する語句と同じ語句、または同義の語句が出現する割合が高い。相手を罵倒するような表現とともに用いられることはあまりなく、相手の発話内容を否定する(話し手の視点ではあり得ない考えとして)のに用いられることが分析から判断できる。 一方、「Pものか」の比較対象として、同じ反語の意味を持つ「Pか」についても分析を行った。「Pか」のPには直前の相手の発話に出現する語句と同じ語句、または同義の語句が出現する割合はかなり低い。そして、相手を罵倒するような表現とともに用いられる傾向が高く、相手を非難するのに用いられやすいことが分析から判断できる。 従来の研究では、上述のような「Pものか」の使用について論述された研究はほとんどなく、また、反語を表す「Pか」との違いについても述べられた研究は管見の及ぶ限り見当たらない。この研究の成果は「もの」を語構成に持つ機能語についての研究だけでなく、反語の研究においても重要な意義を持つものと考える。 現在、上述の内容に加えて、2019年度までにある程度分析を進めていた「ものなら」「(よ)うものなら」「ものを」「ものだ」についても分析を深めているところであり、「ものか」との文脈上の用法、性質についての共通点を今後分析している予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画よりやや遅れていると判断したのは、次の2つの理由によりデータの分析が予定していたところまで進んでいないためである。 (1)コロナ禍で大学の授業形態がオンラインに切り替わり、その対応のため研究に使える時間が想定していたほど確保できなかった。 (2)健康上の理由により手術、入院をした期間があったため、その期間研究がほとんど行えなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度前半には、まだ分析が終了していない「ものなら」「(よ)うものなら」「ものを」「ものだ」についても分析を進めていく。後半は、それまで調査、分析した各機能語の使用文脈、用法、機能、各機能語が表す事態の特徴をまとめていき、すべての機能語の文脈の展開パターンを分析し、体系的にまとめていく。そして、すべての機能語に通底する性質についても分析を進めていく。
|