2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Japanese Educational Grammar Books for Sinhala Native Speakers Aiming for Efficient Learning and Mutual Cultural Understanding
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20K13095
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
宮岸 哲也 安田女子大学, 文学部, 教授 (30289269)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 対照研究 / 日本語 / シンハラ語 / 日本語教育文法 / 習得研究 / 文法 / 発音 |
Outline of Annual Research Achievements |
シンハラ語母語話者にとって習得困難な日本語の文法や発音を探るべく、研究会メンバーで対照・習得研究を進めた。 D. Chandralal氏の「シンハラ語の自動詞・他動詞の対応について」では、シンハラ語動詞の自他の対立が専ら他動詞から自動詞が派生することと、日本語学習上の問題点として「karanawa/する」「wenawa/なる」の不対応と、格標識の不対応が指摘された。K.G.K. De Silva氏の「シンハラ語複合動詞のヴォイス的対立について」では、シンハラ語の「する/なる/される」が機能動詞となる複合動詞のヴォイス的対立が整理・分類された。D.D.Jayasuriya氏の「シンハラ語母語話者による日本語の発音の誤用について」では、日本語の発音に関する意識調査の結果報告と、文節音と韻律の各レベルで母語干渉、中間言語、個人要因と考えられる誤用が体系的に示された。永井絢子氏の「作文コーパスに 見られる『が』の正用」では、シンハラ語母語話者の日本語作文コーパスの分析結果から、主体のみならず対象を表す格助詞「が」の正用の多さが指摘された。家村伸子氏の「シンハラ語母語話者の『(ら)れる』の使用実態」では、日本語作文対訳データべ-スを対象に分析した結果、「(ら)れる」の過剰使用が認められ、その要因がシンハラ語対訳との対照により検証された。宮岸の「シンハラ語文法を活用した『は』と『が』の使い分け説明」では、「は/が」の使用にはシンハラ語母語話者の学習者ストラテジーが存在することと、「は/が」の諸用法をシンハラ語の訳語で説明できるものとできないものに分け、文法説明に生かすべきことが論じられた。また宮岸の「対照研究を踏まえたシンハラ語母語話者に対する日本語指示詞の指導」では、4体系のシンハラ語指示詞のうち、e系は日本語の「コ、ソ、ア」に対応する場合があり、その詳細な説明の必要性が論じられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
日本語とシンハラ語の対照研究と習得研究は着実に進めているが、その研究の妥当性や有効性を検証するための調査・研究や、その先にある教材化のための作業は、ほとんど手をつけられていない状況である。その理由は、この2年間、コロナ禍で海外への渡航ができず、当初予定していたスリランカでの調査や現地のスリランカ人日本語教師会での発表や意見交換ができていないためである。 コロナ禍の収束が期待できる今年度は、現地への渡航を考えているが、最近の報道ではスリランカ国内の政情不安による社会混乱が伝えられており、実施できるかどうかは不透明である。実施できない場合には、可能であれば研究期間を延長したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
未着手の、或いは不十分な日本語とシンハラ語の対照研究の領域として、モダリティやアスペクト等があるので、今後はそれらの対照研究を進めて行きたい。そのための準備として、研究会の参加メンバーを増やし、研究グループの規模を大きくしている最中である。既に、シンハラ語母語話者の日本語教師3名、スリランカで日本語指導歴のある日本人教師1名、シンハラ語を研究する日本人大学院生1名が、新たなメンバーとして研究会のグループに加わっている。 今まで行ってきた対照研究については、その成果を生かした文法書の執筆作業へと進め、更にはシンハラ語に翻訳していきたいと考えている。これらの作業を、できるところから進めていく予定である。翻訳作業のための協力者は、日本語文法とシンハラ語文法に熟知したスリランカ人日本語教師で、2022年9月以降、報告者の研究室で研究を行う予定の留学生に依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していたスリランカでの調査が実施できず、また、国内で予定していた会議も、コロナ禍でオンライン会議システムを活用した結果、計上していた経費を使用することができなかった。 コロナ禍が収束されていく中で、今後は研究メンバーの国内外の旅費、調査の謝礼金、翻訳の人件費として助成金を使用してく予定である。
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Research Products
(3 results)