2023 Fiscal Year Annual Research Report
語彙処理と文処理のメカニズムを統合した英語学習者の形態素習得に関する研究
Project/Area Number |
20K13123
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
田村 祐 関西大学, 外国語学部, 准教授 (40826385)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複数形形態素 / 数の一致 / 第二言語習得 / オンライン実験 / 形態素処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
英語の第二言語学習者が持つ屈折形態素の知識とその処理メカニズムについて,(a)語彙処理,(b)文処理,(c)形態素とそれが持つ意味のマッピングという3つの観点から習得困難性を統合的に説明する仮説の生成を目指して,ウェブ・ベースでのオンライン実験を実施した。
プライミング語彙性判断課題では,複数形の名詞(e.g., _balls_)を提示したあとにターゲット語(e.g., _BALL_)の反応が早くなるプライミング効果の傾向が母語話者・第二言語学習者のどちらのグループでも見られた。これは,語彙レベルの複数形形態素の処理で母語話者と学習者に同様のメカニズムが働いている可能性を示唆している。また,語数の判断課題では,複数形名詞を1語と判断するのに要する反応時間は,単数形名詞を1語と判断する反応時間よりも長くかかる傾向がどちらのグループでも見られた。これは複数形形態素とその意味(1より大きいという複数性)の関係性を母語話者と学習者で同様に認識していることを示唆していると解釈できる。しかしながら,自己ペース読み課題により,読解中の数の一致の誤りとその誤りへの反応のゆらぎが観察されるかについては,母語話者と学習者による違いが見られた。この課題の結果では,The boy at the park are... のような誤りによって読解時間の遅れが見られる一方で,The boy at the parks are...のように,動詞の直前にある複数形名詞の影響を受けて読解時間の遅れが減少する傾向が母語話者群では観察された一方で,学習者群にはこうした遅れの減少は観察されなかった。この結果は,第二言語学習者が,名詞に付与される複数形形態素を文処理中に用いることの困難さを示唆していると考えられる。以上の結果により,複数形形態素の習得やその処理の困難性は,数の一致という形態統語的な操作(bの領域)が原因として生じている可能性を示唆していると結論づけることができる。
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