2021 Fiscal Year Research-status Report
英語学習者による動詞の用法の習得調査と効果的な指導法の開発
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20K13131
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大瀧 綾乃 静岡大学, 情報学部, 講師 (60840676)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 英語学習者 / 他動詞用法・自動詞用法 / 他動詞・自動詞・自他両用動詞 / 主語の有生性 / 明示的文法指導の効果 / 直接否定証拠 / 英文法指導法の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語母語の大学生英語学習者が、動詞(他動詞、自動詞、自他両用動詞)の用法の習得を困難にする要因を、主語の有生性等から多面的に調査・分析すること、および分析結果に基づいて、英語学習者が動詞の用法を正しく理解し使用できるための指導法を開発し、学習者に対して長期間有効に機能するかどうか検証することである。 令和3年度は、明示的文法指導において否定証拠を与えることの効果について検証実験の分析と結果の公表を行った。令和2年度に実証実験を行った、自動詞に対する明示的文法指導法では、文法的な自動詞用法に対して指導直後に効果があることが分かったが、一方で、非文法的な自動詞を他動詞用法として用いた文(例 *The moon disappeared the stars.)については、指導直後も指導10週間後も効果が見られないことが明らかになった(大瀧, 2021)。自動詞を他動詞用法で用いた誤りの文に対して、誤りを提示して誤りであると説明すること、つまり明示的文法指導において直接否定証拠を提示することは本当に効果がないのか否かについて更なる検証が必要であると判断した。そこで開発した自動詞に対する明示的文法指導法を用いて、直接否定証拠(自動詞を用いた他動詞用法は誤りであると提示すること)を学習者に与えることの効果を、直接否定証拠を与えない指導法と比較検証することで実証するための実験を行い、その結果を分析した。 実験結果分析より、否定証拠を用いた明示的文法指導は指導後も効果が見られ、非文法的な自動詞を伴う他動詞用法の文を誤りである正しく気づくことができた。一方で、否定証拠なしの明示的文法指導を受けた群および明示的文法指導を受けなかった統制群ではその効果は認められなかったことから、否定証拠を用いた本明示的文法指導は誤った自動詞構造の文の理解に効果的であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、令和2年度に実施した、否定証拠を用いた自動詞への明示的文法指導の効果検証実験について、結果を分析した。その結果、学習者に否定証拠を提示すること(自動詞を伴う他動詞用法の文は文法的に誤りであると提示すること)は、否定証拠無しの文法指導と比べて効果があり、否定証拠を受けた学習者は誤りの文を誤りであると正しく認識できる傾向が見られた。本研究成果は、教師が英語学習者の動詞の用法に対する正しい知識を高めるための指導を行う際に、否定証拠の活用することへの有効性を提示することができたという点において、明示的文法指導における新たな知見を提示することができた。 上記の分析結果を研究発表(2件)と論文(1件)として発表することができた。研究発表は、中部地区英語教育学会 課題別研究プロジェクト「言語・認知・学習理論を基盤とした英語指導の新しい展開」第7回研究会、および中部地区英語教育学会 第50回記念大会にて課題別研究プロジェクト「言語・認知・学習理論を基盤とした英語指導の新しい展開」の発表者として実施した。論文として、中部地区英語教育学会紀要51号にて、大瀧綾乃(2022)「否定証拠を主とした明示的文法指導の効果 ―英語の自動詞に対する理解に焦点を当てて―」(pp.195-202)として発表することができた。 したがって、研究計画に沿って順調に研究を進めていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研費プロジェクトを通して、英語学習者が自動詞(非対格動詞)に対する正しい理解を高めるための効果的な明示的文法指導法の開発に焦点を当てて研究を進めてきた。学習者は自動詞用法の文を文法的であると正しく判断できるが、非文法的な自動詞を伴う他動詞用法の文を正しいと誤って判断する傾向が見られ、このような学習者の自動詞への誤った知識を改善できる文法指導法を開発し、その効果を検証し、論文および学会発表にて公表することができた。 本科研費プロジェクトは、動詞の用法の習得と効果的な文法指導法の開発に焦点を当てており、自動詞だけではなく、他動詞と自他両用動詞についても同様に習得を困難にする要因の分析と、その分析に基づく効果的な文法指導法の開発、効果検証を実施する必要がある。 本科研費プロジェクト担当者は、自他両用動詞の習得と文法指導法の開発、効果検証を博士論文にて実施してきたが、他動詞に焦点を当てた研究は未だ実施していない。令和4年度は、他動詞に焦点を当て、他動詞の項構造について学習者に観察される誤りとは何か、誤りを引き起こす要因は何かについて、まずは先行研究の調査を進める。先行研究調査の結果を基に、英語学習者の他動詞に対する習得実験を新たに行い、他動詞に対する誤りとその原因を明らかにしたい。そして、その実験結果を基にし、他動詞に対する効果的な明示的文法指導法を提案する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナウイルス感染拡大の影響により、参加した学会、研究会が全てオンライン開催となったことによる(参加したオンライン開催の学会:中部地区英語教育学会 第50回研究大会、中部地区英語教育学会 課題別研究プロジェクト「言語・認知・学習理論を基盤とした英語指導の新しい展開」第7回研究会、全国英語教育学会、The JACET 60th International Commemorative Convention、大学英語教育学会中部支部大会、同第1回、第2回定例研究会)。そのため、予定していた出張が全て中止となり、旅費を使う機会がなくなった。 使用計画は、まず「設備備品費」では、他動詞の習得と明示的文法指導の研究に関連する先行研究の調査を行うための書籍を購入し、書籍を通して情報の収集を行う。「第二言語習得・言語学」関連書と「外国語教授法・文法指導法・言語テスト評価関連」関連書籍を購入する。また、文法指導法の効果検証実験で使用する消耗品を新たに購入する。さらに、データ分析・論文執筆用のパソコン、プリンター等も購入する。「その他」は、英文校閲代、学会大会参加費、「消耗品費」では、文具代・プリンターカートリッジ等に使用する。
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Research Products
(3 results)