2022 Fiscal Year Annual Research Report
万歳唱和の新研究――東アジア礼制比較史研究の総合化に向けて
Project/Area Number |
20K13156
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三田 辰彦 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (00645814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 万歳唱和 / 礼制 / 漢-唐 / 東アジア / 比較史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、中国古代の諸儀礼における万歳唱和という所作が、いかに一つの型をなすようになり、当時の人々の心性といかなる関連性をもつのかを解明することである。この課題遂行を通して、東アジア礼制比較史研究の総合化の促進を目指す。 最終年度はこれまでの基礎的作業を踏まえ、研究成果を公表した(以下、研究報告はオンライン)。中国学研究者に向けた「『大唐開元礼』にみえる万歳唱和」(第70回東北中国学会大会、2022年5月28日)、日本史を含む東アジア史研究者に向けた「漢唐時代の王室儀礼における万歳唱和」(第54回東アジア后位比較史研究会、2022年7月16日)、中国の中国史研究者に向けた「唐代“舞蹈万歳”再考 ―以《大唐開元礼》為線索」("中古時代的文本世界与物質世界"青年学者工作坊第四場、2022年7月31日)を報告。当該年度の成果を「『大唐開元礼』にみえる万歳唱和」として投稿し(『文化』86巻第3・4号、2023年発行予定)、現在第二校まで終了。 また予てより参加を目指していた中国側主催の研究交流会(「研究成果」参照、2022年11月5日~6日)がオンラインで実現し、中国・台湾・日本の若手研究者間で中国古代中世史研究の新たな方向性を討議する場に参加できた。 国内外の研究報告での反応からみて、唐以前からの長期スパンをとり、日中を架橋する事象の推移を示すことで比較研究を促進し得るとの確信を得た。ただし調査の過程で、儀礼の場では上寿の祝辞を伴う礼=上寿礼に組み込まれがちな一方、儀礼以外では「長寿」から派生した場面にしばしば見られる(長生きする→生き永らえる喜び→戦争や反乱など命の危機を脱する喜び)ことが判明した。この結果から、万歳唱和を〈長寿の願い〉というより広い文脈の中で考察する余地があることに気づいたが、この点は上寿礼に関する新科研の遂行と併せて研究を深め、今後の公表に努めたい。
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