2020 Fiscal Year Research-status Report
近世後期・幕末における公家による金融活動の総合的研究
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20K13181
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
佐藤 雄介 学習院大学, 文学部, 准教授 (20624307)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 江戸時代 / 天皇 / 朝廷 / 朝幕関係 / 鷹司政通 / 名目金 / 金融活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究史上、関係史料の調査および複製の収集が、もっとも重要な課題であった。そのため、コロナの感染問題に充分な注意を払いながら、京都府立京都学・歴彩館といった史料保存機関に赴き、関係史料の調査や複製収集を行った。 また、おなじく研究史上のおおきな課題のひとつであった鷹司家の名目金の貸付先について、種々の「雲上明覧」などを用いて、その実態の解明を進めた。その結果、従来知られている以上に、よりはばひろい範囲で、名目金の貸与が行われていたことが明らかになった。 そのほか、鷹司家の名目金の運用を実質的に担っていた商人の一人と考えられる茶染屋五兵衛の性格についても、京都市歴史資料館架蔵写真版「高嶋(弥)家文書」などの諸史料から、考察を深めることができた。 全体として、とくに基礎的な部分について、研究を進めることができたと考える。より具体的な成果についていえば、鷹司家・鷹司政通による名目金(金融活動)に関して、現在までの知見を中心にまとめた「公家の名目金と懐事情」を、学習院大学文学部史学科編『歴史遊学』(山川出版社、2021年6月頃刊行予定)に寄稿した。 また、鷹司家・鷹司政通による名目金の問題も含め、近世後期から幕末にかけての天皇・朝廷に関する研究史上の論点などを述べた「幕末の天皇・朝廷と近世後期の天皇・朝廷」(岩城卓二など編著『論点・日本史学』ミネルヴァ書房、2021年刊行予定)も原稿提出済みである。 さらに、2021年6月には、本研究課題の成果を含んだ講演を行う予定である(「開国前夜の天皇・朝廷と鷹司政通」(仮)、第37回学習院大学史学会、於学習院大学〈状況によりzoomでの開催の可能性もある〉)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、研究史上、関係史料の存在があまり知られておらず、それらの調査や複製収集がおおきな課題であった。そこで、本年度は京都などでの史料調査を積極的に行う予定であったが、コロナの問題により、出張の数を減らさざるを得なかった。 しかし、2度ほどは京都出張を行うことができ、関係史料の調査を実施、史料の複製を得ることができた。また、関係する研究書・史料集を積極的に購入し、研究を進めることができた。具体的な内容は、「研究実績の概要」に記したとおりである。 その結果として、いくつかの成果を書き上げた(詳細は「研究実績の概要」を参照してほしい)。また、これも「研究実績の概要」で述べたとおり、2021年6月には、学習院大学史学会で講演を行う予定であり、そのための準備も順調に進んでいる。そのほか、寄稿する予定のある論文の執筆も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もまずは、研究史上の最大の課題である関係史料の調査・複製の収集を実施していく予定である。もちろん、コロナの問題の関係で、種々の制限はかかるであろうが、充分な配慮のもと、史料調査を行っていく。初年度は鷹司家の名目金を中心に検討を進めてきたが、本年度はおなじ摂関家の二条家のそれに関しても史料調査を実施していきたい。調査場所は、京都などの遠方だけではなく、東京大学史料編纂所や宮内庁書陵部、慶應義塾大学文学部古文書室なども予定している。 以上のような史料調査によって入手した諸史料を用いて、鷹司家の名目金の実態と政通の朝廷運営との関係をより具体的・有機的に考察していく。さらに、それらをもとに、近世後期から幕末の朝幕関係についても考察していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ感染の拡大により、史料調査のための出張をやや抑えめにせざるをえなかった。それにともない、史料複製費についても予定通りの執行は行えなかった。2021年度は、コロナの問題に十分な注意を払いながら、史料調査を実施し、史料の複製収集を進めていくつもりである。
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