2022 Fiscal Year Research-status Report
A People's History of Japan - Japanese migrants' labour movements during the Meiji and Taisho periods
Project/Area Number |
20K13183
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 労働運動 / 移民 / 下からの歴史 / 民衆の日本史 / ミクロストリア |
Outline of Annual Research Achievements |
・2022年9月に、延期になっていた広島県立文書館への資料調査を実施し、仏領グアドループ島における日本人移民の活動や派遣背景に関する貴重な史料を取得することができた。特に、移民の金銭状況や日本の行政機関等に対する移民父兄による様々な手続きに関する史料が含まれており、グアドループ島における日本人移民の実態についてより詳しく理解することが期待できる。(先行研究において使用されてこなかった史料が多くみられる。) ・研究協力者の援助により、以前から取り組んでいる外交資料館の史料翻刻作業が進み、グアドループ島における日本人移民の労働運動(ストライキ)に関する史料の分析を進めることができた。次年度に何らかの形でそれらの史料の分析成果を発表したいと考えている。 ・2023年2月に「フランス植民地帝国の周辺―裁判で見るグアドループ島における日本人労働運動」という題名の論文を刊行した(小山田紀子、吉澤文寿、ウォルター・ブリュイエール=オステル編『植民地化・脱植民地化の比較史―フランス‐アルジェリアと日本‐朝鮮関係を中心に』藤原書店,544p/該当論文はp.90-111)。仏領グアドループ島の日本人移民による労働運動に参加した数名の裁判データを分析したものである。それらの裁判はフランスの植民地における日本人労働者の弾圧とも言えるのではないかと証明しようとしたものである。 ・以前から本研究の核心をなすべきデータベースの構築の理論上の準備を進めたが、実現に向けての技術者が見つからず、次のステップへと進出できていない。次年度の最重要課題と定めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度中は、延期になっていた広島県立文書館への史料調査を実施し、仏領グアドループ島における日本人移民による労働運動に関する論文を執筆・刊行し、また外交資料館の史料の翻刻作業とその分析が進んだので、昨年度より本研究にきちんと取り組めたと言えよう。 さらに、昨年度の「研究実施状況報告書」において説明したように、「明治・大正期に日本人(出稼ぎ)移民が起こした労働運動を網羅・分類し、データベース構築という基礎的作業を実施」することがまだ困難且つ現実的でないため、「仏領グアドループ島における日本人移民の労働運動を「ミクロストリア」のような分析・描写方法を利用して徹底的に記述したいと」本研究の位置付けと内容を変更した結果、それなりの成果をあげてきたと考える。 ただし、日本人移民による労働運動の一事例を「ミクロストリア」的に扱うにしてもその運動に参加した移民のデータベース構築が不可欠であるという意味では、現在までの進捗状況が「やや遅れている」と認めざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には主に以下の3点を推進する予定です。 1.仏領グアドループにおける日本人移民のデータベース構築を実現する。その作業を、元々本研究の主な目標であった明治・大正期における日本人移民が起こした労働運動に関するデータベース構築の第一ステップとして位置づけたい。本研究が終了した後でもそのデーターベースを補完していくことを念頭におきながら構築を考える。当然ながら、他の研究者が協働して相互的に使えるデータベース構築を目指す。 2.2022年度に引き続き、「「下からの歴史」及び「ミクロストリア」の分析・記述方法に従い、仏領グアドループ島における日本人移民の労働運動に関する史料分析を」さらに進め、研究発表や論文としてまとめる。また、他の事例との比較を念頭におきながら成果発表を考える。 3.時間と予算の許す限り、当初の「交付申請書」の「研究実施計画」に記載されている資料館への資料調査も計画する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、データベース構築のための技術者の選定が困難であり未だにその作業に着手できていないことである。 次年度使用額を主にデータベース構築に充当する予定である。 技術者の見積もり次第ではあるが、予算残高の許す限りもう一度の資料調査も実現できたら本研究の発展につながると考えられる。 場合によっては、研究成果の投稿費用等にも次年度使用額を充当することが考えられる。
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Research Products
(1 results)