2021 Fiscal Year Research-status Report
法的家族の成立要件にみる国家支配―秦代・漢初の家族制度の復元を通して
Project/Area Number |
20K13196
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
佐々木 満実 お茶の水女子大学, グロコンピテンシー育成開発研究所, 研究員 (50838795)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 秦漢史 / 家族史 / 法制史 / 簡牘資料 / 中国史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、秦代から漢初にかけての「家族」の成立と国家支配との関係を解明しようとするものである。その方法として、簡牘資料に散見する「家族」に関連する法制度を収集・分析し、その復元から、当時の国家が法制度を通じて創出しようとした「家族」の在り方を考察する。 令和3年度は、令和2年度に引き続き、現在公開されている秦漢時代の簡牘資料から「家族」に関連する法制度を収集して時代ごとに整理し、内容を分析するという作業を行った。とくに、前年度に入手した陳松長主編『嶽麓書院藏秦簡(陸)』(上海辞書出版社、2020年、以下『嶽麓(陸)』と略称)の分析に注力した。『嶽麓(陸)』には『嶽麓書院蔵秦簡(伍)』(上海辞書出版社、2017年)に収録されている法律条文と類似した条文がいくつか見える一方で、そこには異動も存在し、「家族制度」の時代的変遷をうかがうことができる。本年度は、上記の資料も含め、これまでに整理した時代ごとの「家族制度」の復元作業を行ったが、資料整理や分析に不十分な部分もあり、「家族制度」の背景にある国家の意図について具体的な考察を行うには至らなかった。そのため、本研究課題の助成期間を延長し、令和4年度に改めて考察を行うことにした。令和4年度は、これまでに得られた成果を再検討したうえで、さらなる考察を加え、その最終成果を学術論文や学会報告の形で積極的に発信していきたいと考えている。。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は、前年度までに整理した資料を用いて具体的な考察を行う計画であったが、申請時には未公開であった資料が公開されたことで、対象となる資料や関連研究が増え、その分析や再検討に時間を要したため、十分な考察時間を確保することができなかった。また、令和2年度から延期していた中国における現地調査の実施・国際学会への参加等の計画も、新型コロナウイルスの再流行を受けて実施できず、国内においても研究会の休止等が相次いだため、成果の発表とフィードバックの獲得が難しい状況にあった。以上のような内外的要因が重なり、計画に遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度以降、実施を見送っている現地調査等をいつ実施するかについては、中国における新型コロナウイルスの影響がいつまで及ぶか予見しがたいため未確定であり、具体的な計画を立てられない状況である。令和4年度においても状況が充分に改善されない場合には、実施自体を中止し、その分の旅費等の予算は書籍代に回すなどして、国内における研究を拡充していく予定である。令和4年度はこれまでに収集・整理したデータを利用して具体的な考察を行うとともに、本研究成果の総括を行いたい。
|
Causes of Carryover |
令和3年度は、令和2年度に引き続き、新型コロナウイルスの影響により、海外での実地調査や国際学会への参加を実施することができず、旅費やコーディネーターに払う謝金、論文翻訳費用等を使用できなかったため。 延長した令和4年度にこれらの費用を使用する予定であるが、社会情勢により海外渡航が難しい場合は、書籍代等に回し、国内での研究を充実させる計画である。
|