2022 Fiscal Year Research-status Report
法的家族の成立要件にみる国家支配―秦代・漢初の家族制度の復元を通して
Project/Area Number |
20K13196
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
佐々木 満実 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特別研究員 (50838795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家族史 / 簡牘資料 / 中国史 / 秦漢史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、秦代から漢初にかけての家族の成立と国家支配との関係を解明しようとするものである。その方法として、簡牘資料に散見する家族関連の法制度を収集・分析し、その復元から、その時代の国家が法制度を通して創出しようとした家族の在り方を考察する。 令和4年度は、これまでに収集・整理した秦漢時代の簡牘資料を用い、時代ごとの「家族制度」の分析と、これまでの分析の再検討を行った。報告者は公益財団法人東洋文庫の中国古代地域研究班簡牘研究班から派生した若手研究者を中心とした有志による『嶽麓書院藏秦簡(參)』講読会に参加しており、メンバーとともに資料の精緻な講読による新たな解釈の可能性を検討している。本年度取り上げた案例〇七は当時の法制上の夫妻関係にも関わる資料であり、報告者もかつて当該資料を用いた論文を発表しているが、その後に公開された簡牘資料等の情報も勘案しながら、法制上の家族に対する新たな解釈を検討した。令和4年度は、陳松長主編『嶽麓書院藏秦簡(七)』(上海辞書出版社、2022年)や『張家山漢墓竹簡[三三六号墓]上・下』(文物出版社、2022年)等、本研究の考察に大きく影響する新たな資料が公開されるとともに関連の研究も多数発表され、これまでの研究を再検討する必要があったが、本年度は諸事情により研究時間の確保が難しく、十分な考察を行うことができなかった。また、新型コロナウィルスの影響による渡航制限により、中国にて行う予定の調査研究や成果発表も延期せざるを得なかった。そのため、本研究課題の助成期間を延長し、令和5年度に改めて考察を行い、あわせてこれまでの研究成果の発信を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請時の計画では、中国における現地調査の実施・国際学会への参加等を予定していたが、2020年1月下旬以降の新型コロナウィルスの世界的な流行による断続的な渡航制限の影響を受け、中国への渡航の機会を逸してしまった。また、本年度は『嶽麓書院藏秦簡(七)』(上海辞書出版社、2022年)や『張家山漢墓竹簡[三三六号墓]上・下』(文物出版社、2022年)等、本研究の考察に大きく影響する新たな資料が公開されるとともに関連の研究が発表されたため、これまでの研究を再検討する必要があり、計画に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスは収束に向かっており、中国への渡航も可能となったことから、これまで延期していた現地調査を実施したいと考えている。一方で、業務等の都合により渡航の具体的日程を確定することが難しく、状況によっては研計画の再編成を行うことも視野にいれている。令和5年度はこれまで整理・分析したデータを利用して具体的な考察を行い、その成果を段階的に発表していくとともに、研究成果の総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
前述の通り、新型コロナウィルスの影響で研究計画に変更が生じているため、次年度使用額にも変更が生じている。令和5年度はこれまで実施を見送っていた現地調査等を本年度計画分とまとめて実施する予定であるが、実施が困難な場合には、その分の費用を申請時点では刊行されていなかった資料や書籍類の購入費として使用したいと考えている。
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