2022 Fiscal Year Research-status Report
社会事業形成期における児童福祉:北京・上海・南京の孤児院の比較を中心に
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20K13197
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大江 平和 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 基幹研究院研究員 (20869193)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国社会福祉史 / 中国児童福祉史 / 慈善事業と女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目の2022年度は、1年目、2年目にコロナ禍によって実施できなかった中国・台湾での史料調査を計画していた。具体的には、本課題と関わる上海・南京公文書館へ出向き、1920年代社会局の組織や構成員、及び行政側と事前機構側との往復公文書の収集・分析を行う計画であった。 しかし、2022年6月までは仕事をしながら週一回通院して病気の治療を続ける必要があったこと、体力的にはまだ万全とは言い難い状況にあったこと、中国の厳しいゼロコロナ政策により渡航が制限されたことなどの理由により、結局は実現できずに終わった。 一方で、世界で最も早く福祉政策が実施されたことで知られるイギリスと中国の比較はできないだろうかと考え、関連文献を通読した。イギリスの福祉政策、とくに児童福祉に焦点を当てて、中国との比較を念頭に置きながら、その福祉政策の変遷を把握することに努めた。加えて、昨年度に引き続き、1920年代中国で「慈善事業を支えた女性」というテーマについても、文献を通読して思索を深めていった。 実証研究を重んじる歴史学では、史料がなければ何も始まらない。史料調査ができないのであれば、それに代わる成果を生み出すにはどうすればよいか。熟慮した末に出した結論は、これまで積み重ねて研究成果の集大成として本を出版することであった。これはかねてから報告者の念願ではあったが、まだ時期尚早なのではないか、という思いも抱いていたが、思い切って出版社の門を叩いて出版契約までこぎつけた。タイトルは『近代中国児童福祉の原型―北京香山慈幼院における慈善事業から社会事業への歩み』とする予定である。2023年11月の出版に向けて、現在着々とその準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者は、当初3年目の2022年度に計画していた中国・北京・上海・南京および台湾での史料調査は実施できなかった。加えて病気治療のため、3年目の研究実績は出すことはかなわなかった。しかし、報告者のこれまでの研究成果の集大成として、本の出版が具体化し、その準備が順調に進んでいるため、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2023年度は、①11月に『近代中国児童福祉の原型―北京香山慈幼院における慈善事業から社会事業への歩み』を出版する。②ようやくコロナが落ち着きを見せ、中国・台湾への渡航手続きも一気に簡素化され、史料調査が行える条件が整ったので、1年目から3年目に計画していながら実現できなかった中国・台湾へ史料調査に赴く。3年間で得られた研究成果と収集した史料をまとめて、学会発表、論文投稿を積極的に行い、本課題をしめくくる。③7月末には、中国・南昌大学で数年ぶりに開催される「第9回中国近代社会史国際学術シンポジウム」に参加を予定している。
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Causes of Carryover |
報告者は本課題を遂行するため、1年目(2020年度)から3年目(2022年度)まで、北京・上海・南京および台湾での史料調査を予定しており、そのための旅費を計上していた。しかし、コロナ禍で海外渡航は実現不可能となり、その分は未使用となった。加えて国内の史料調査の旅費についても健康上の理由から実施できず、その分も未使用となった。その未使用分は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、4年目(2023年度)に予定している国際会議の参加、史料調査の渡航費に充てる。加えて、これまでの積み重ねてきた研究成果の集大成としての成果の公表に充てる計画である。
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