2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13198
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 亮一 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (00867856)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フン系集団 / キダーラ / エフタル(アルハン) / バクトリア語文書 / アラビア語年代記 / トハーリスターン |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる2020年度は、アラビア語年代記や漢文資料に記されている「フン系集団」の動向の調査、および集団が支配した在地社会の様相を探るためのバクトリア語資料の調査に注力した。世界的なコロナウイルスの蔓延が続いているため、海外調査や国内調査は全く実施することができず、もっぱら既存の校訂本等を利用して研究を行った。 まずは、後世の資料ではあるものの、フン系集団と対峙したサーサーン朝の歴史に関する貴重な情報を持つ2つのアラビア語年代記(ディーナワリー『長き物語の書』、無名著者『ペルシアとアラブの歴史における究極の目的』)の読解を行った。サーサーン朝の初期にあたる部分を重点的に読み込み、他のアラビア語文献には見られないいくつかの情報を得たが、難解な語彙や理解できない文章がいくつか残った。漢文資料に関しては、中国の正史の他、仏教僧の記述などを中心に調査し、フン系集団の動向に関連する情報の一覧作成を開始した。 一方、フン系集団に支配された在地社会の状況に関する研究としては、在地の宗教事情に関する研究を行った。これはフン系集団の支配のあり方の解明に直接貢献するわけではないが、全く未着手の分野であったため、あえてこの課題に取り組んだ。フン系集団が支配した中央アジアの一地域トハーリスターン(現在のアフガニスタン北部、ウズベキスタン南部、タジキスタン南部)では、この地を流れるアム・ダリア(オクサス川)が古くから信仰の対象となっており、バクトリア語文書の記述からその具体的な姿を明らかにした。そして7世紀後半以降、この地域に北方のソグドからの影響が顕著に現れることも明らかにした。ソグドからの影響は、フン系集団の支配が終焉を迎えた後に現れたものであり、その出現の要因を探ることで、集団の末期の動向を解明することにつなげてゆくことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
諸資料の読解・検討に関しては順調に進んでいるが、海外調査・国内調査を全く行うことができなかったため、アラビア語年代記の写本調査、およびフン系集団が発行した貨幣の実見調査が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きアラビア語年代記、漢文資料をはじめとする編纂資料、および現地語文献であるバクトリア語文書の読解・検討を進め、フン系集団の具体的な動向、支配の在り方を可能な限り明らかにすることを目指す。アラビア語年代記の難読箇所については、アラビア語の専門家に相談したいと考えている。 次年度には何らかの形で写本や貨幣などの資料の実見調査を行いたいと考えているが、パンデミックの状況次第で調査の計画をさらに次年度に持ち越す可能性がある。
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Causes of Carryover |
パンデミックにより国内外の資料調査が実施的なかったため、次年度使用額が生じた。状況が許せば、2021年度の助成金と併せて各種調査を実施したいと考えている。
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