2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13205
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石野 智大 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (00770968)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 唐 / 基層社会 / 地方行政制度 / 村落制度 / 戸籍制度 / 出土文字史料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究初年度として、石刻史料集からの新たな事例収集と代表者が予備調査時に入手した碑刻データの整理・分析を進め、拓本史料集に未収の重要な石刻題記については中国現地での拓本・実物の調査を行うことを予定していた。 ただし、研究課題採択時期前後からの新型感染症の流行拡大によって、海外の大学や図書館などでの史料調査は困難となり、本年度の史料収集・整理作業は既刊の石刻史料集(図版・録文)や研究文献を中心に進めることになった。研究環境やエフォート率の大きな変化もあり、その収集・整理作業はなお十分ではないが、唐代の地方支配制度のなかでも、県―郷―里の間の行政実務担当者レベルの活動実態(職掌外の動きを含む)が明瞭となってきたことは一つの収穫として挙げられる。 また、上記の作業と並行して、本研究課題やその周辺分野の研究動向の整理を進めたことで、従来の研究の成果と課題をより明確に把握できたことは重要な意味を持つ。それらの成果は、来年度に刊行の研究雑誌や共著書で公刊される予定であるが、本年度においてはその調査・執筆作業を積極的に進めることができた。 さらに年度後半では、唐代の地方支配制度の一部を構成する地方行政や村落制度、またそれとも密接な関わりを持つ戸籍制度の理解を深めるために、唐代前期の「貌閲」(地方行政長官による村落内での首実験)の問題を取り上げた中国語論文の日本語翻訳を行った。すでに原著者の許諾を得ており、来年度に国内の研究雑誌に発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、2020年初からの新型感染症の流行拡大、4月以降の緊急事態宣言や海外渡航の制約、また大学でのオンライン授業実施に伴うエフォート率の大きな変化などが重なり、当初の予定を一部変更せざるをえない事態が生じた。とくに海外の研究機関での史料調査が困難となり、国内の大学も多くは外部利用不可となったことが影響し、本研究に関わる史料の収集・整理には遅れが出ている。その一方で、本研究課題に関わる最新の研究動向の整理や、戸籍制度など隣接分野の研究状況の把握は進展しており、複数の成果(次年度に発表予定)をまとめることができた。 以上のことから、本研究については、研究全体に関わる基礎的な作業は進んだものの、当初予定した作業が十分に実施できておらず、「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の史料収集・整理作業の遅れを取り戻すために、当面はそちらに時間を割きつつ、その後は本来の計画に沿って、唐代地方支配制度の実態分析を行う。その際には、唐代の基層社会に関わる文献史料の読み直しを並行して行い、石刻史料・文献史料それぞれから得られる知見を取り出したうえで、両者を接合していく作業を進める予定である。またこれに加えて、新型感染症流行以前に海外研究機関で実見調査していた重要な碑刻については、次年度に詳細な検討を行い、具体的な成果として公表することにしたい。
|
Causes of Carryover |
本研究課題の採択前後より新型感染症の流行が拡大し、国外の研究機関での調査は実施できず、国内の大学での調査にも多くの制約があった。また、毎年開催される学会や研究会の多くが中止もしくはオンラインにて開催された。そのため、当初予定した旅費は使用することがなかった。一方で、国内では所属大学以外の大学図書館が実質的に利用できなくなったことで、代表者が購入する史料集や研究書の点数が増加し、物品費の割合が高くなった。 上記の結果として、次年度使用額が生じている。来年度もこの感染症の流行状況は続く可能性があるため、旅費は相当程度抑えられるものと予想するが、その反面、本研究課題を遂行するうえで図書(史料集と研究書)の購入費が重要かつ必須なものとなる。そのため、翌年度分と本年度分の次年度使用額は、本年度と同様に、主に図書購入費に使用する予定である。
|