2022 Fiscal Year Research-status Report
〈発病占〉についての社会史的研究:近世以降を中心に
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20K13207
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
佐々木 聡 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (60704963)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発病占 / 通俗信仰 / 鬼神 / 民間医療 / 術数 / 甲馬子(紙) / 道教 / 辟邪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(3年目)も前年度に引き続き、研究協力者大野裕司氏(大連外国語大学)の協力の下、新出の発病占書の収集を行った。その結果、中国の古書市場から、清末・民国期の発病占書8種(版本1種、抄本7種)を収集することができた。この内の版本1種は、既に公開した光緒丁未年成和堂刊本『張天師法病書』とほぼ同じ内容・形式の版本であった。これらの資料は適宜データ化して共有し(原本は中国国内で保管)、書誌学的な整理と校本の作成、および内容の検討を進めている。 なおこれまでの研究成果の一部を、本年度5月に基盤研究(B)「東アジア漢字文化圏の疾病・疫病観の史的・現代的展開:鬼系病因論の起源と思想的水脈」(代表:大形徹)の研究会、さらに7月に道教文化研究会の例会にて発表した。前者では、清末民国期の発病占書に見える鬼神観や辟邪儀礼などの検討結果および最近の収集活動について報告した。後者では、前年に魏晋南北朝史研究会の大会で報告した内容を深化させ、特に六朝時代の道教経典に見える発病占的要素についての検討を報告した。これについては『東方宗教』第141号に論文「初期道教経典に見える鬼神観再考:〈発病占〉と暦日の冥官の関係に着目して」として掲載予定である(3月上旬に採用連絡あり、6月刊行予定)。 発病占書の校本については、前年度にResearchmap「資料公開」ページにて公開した「〈発病占〉資料集成(暫定版)」の第1弾・第2弾に続き、第3弾として「光緖丁酉年郭洪興抄發病占書:〈発病占〉資料集成(暫定版)之三」を3月に公開した。 このほか、2023年5月の東方学者会議のシンポジウム「鬼神論研究の最前線」にて、「鬼神研究の現状と課題:社会通念としての鬼神観を研究する立場から」(受理済み)と題した報告を行い、発病占に見える俗神を含めた鬼神観研究のあり方について提言を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、本年度も順調に資料収集をおこなうことができたが、新型コロナウィルス流行の影響により、当初予定していた現地調査を本年度も実施することができていない。また1年目に資料収集ができなかったことも影響し、当初3年間で予定していた研究計画が十分に遂行できていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
全体的な研究遂行の遅れについては、1年間の期間延長により対応する。また現地調査については、新たに見つかった資料を踏まえ、調査地の優先順位を再考した上で実施を模索してゆく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた現地調査が新型コロナウィルスの流行による影響のために実施できなかった等の理由による。この分については、研究期間を1年延長し、調査計画等を見直した上で使用してゆく。
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Remarks |
本研究の一環として作成した「〈発病占〉資料集成(暫定版)」の公開ページ。
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