2021 Fiscal Year Research-status Report
The legal purge of Collaborators with Nazis in France (1944-1949)
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20K13214
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
南 祐三 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (50633450)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対独協力 / 粛清裁判 / 第二次世界大戦 / 第四共和政 / 第五共和政 / ジャーナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もコロナ禍に伴う渡航禁止措置によりフランスでの史料蒐集・分析が実行できなかったために、手元にある文献および史料を駆使して関連する分析に取り組んだ。その成果は、一つの論文と二つの書評で発表した。 まず、いまやコラボ(対独協力者)の一人として記憶されている世界的なファッション・デザイナー、ココ・シャネルのヴィシー時代の活動について検証した。具体的には、雑誌『ユリイカ』(53巻8号)に寄せた論考で、当時彼女がドイツ軍占領下のパリでドイツ人将校と親しくしながら優雅な生活を送っていたことや、利己的な目的のためにドイツ当局に近づき、ドイツ軍の諜報機関のエージェントに登録されていた事実を描き出した。その活動は同時代においてもある程度知られていたにも拘らず、シャネルは戦後の粛清裁判を免れている。こうした事例は、本研究テーマである対独協力者に対する粛清裁判の限界ないし抜け道を示すものであろう。 また、本研究に関連する二つの書物の書評を行った。一つ目は、ヴィシー時代に幼少期を過ごしたユダヤ人で、現在は社会学者として名の知れたピエール・ビルンボームによる歴史書の翻訳である(「抑圧された記憶を取り戻し、信頼すべき共和制国家の裏切りを問う――フランスという「国家の理論」を考察した歴史書:ピエール・ビルンボーム著、大嶋厚訳『ヴィシーの教訓』」『図書新聞』3513号、2021年9月25日、2頁)。 二つ目は、戦後フランス社会の変容をジャーナリズムの視点から辿った、中村督による専門書である(「書評 中村督著『言論と経営――戦後フランス社会における「知識人の雑誌」』(名古屋大学出版会、2021年)」『現代史研究』第67号、2021年、111-117頁)。いずれも、ヴィシー時代と戦後フランスとの連続および断絶を考えるうえで有益であり、それらの書評は本研究の外堀を埋める重要な作業となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画していた2021年度の主な取り組みは、フランス、セーヌ県での史料調査・史料分析であったが、コロナ禍により渡仏することができず、昨年に引き続き国内で実行可能な作業に専念するしかなかった。したがって、本課題の中核となる文書館史料の分析には一切着手できず、研究は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度フランスに行けることを前提とすれば、大幅に遅れている史料の蒐集および分析に努めることが最優先課題となる。早ければ夏に、それが無理でも春の長期休暇を利用して渡仏し、セーヌ県の特別法廷のアーカイヴの調査にあたりたい。 同時に、すでに2021年度初頭に渡仏できない場合のために準備していたものの、結局昨年度中に終えることができなかった二つの課題に引き続き取り組み、2022年度中に確実に終えたい。 一つは、アクシオン・フランセーズの総帥シャルル・モーラスともう一人の有力者モーリス・ピュジョーに対する粛清裁判記録の検証をつうじて、「国家反逆罪」を分析することである。これについては共同論文集への寄稿、あるいは個別論文として査読誌への投稿を検討している。 もう一つは1945年以後のヨーロッパ極右に関する翻訳であり、こちらは近日中に作業を終える見込みである。さらにこの翻訳作業をつうじて得た知見を土台として、1945~1950年半ばにかけてフランスで見られた右翼勢力の再編に関する別稿をしたためる予定である。その成果は、ヨーロッパ近現代史ないしフランス史に関連するいずれかの学会・研究会で報告し、査読誌で論文として発表することを考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度予定していたフランスへの渡航が実現されなかったので、基本的にはその分の費用が次年度に繰り越されるかたちとなった。繰り越された分の費用は、フランスへの旅費や滞在費として使用する予定である。
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