2023 Fiscal Year Research-status Report
The legal purge of Collaborators with Nazis in France (1944-1949)
Project/Area Number |
20K13214
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
南 祐三 南山大学, 国際教養学部, 准教授 (50633450)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 対独協力 / 粛清裁判 / 大赦法 / フランス極右 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究実績としては、まず、Jean-Yves Camus et Nicolas Lebourg, Les Droites extremes en Europe, Paris, 2015の翻訳が挙げられる。ジャン=イヴ・カミュ、ニコラ・ルブール著(南祐三監訳、木村高子訳)『ヨーロッパの極右』みすず書房、2023年として刊行された。同書は、第二次世界大戦期のヨーロッパ各国の対ナチ協力者が、戦後においても政治的に生き残り、ネオ・ファシズムやネオナチとして国際ネットワークを構築していった歴史が詳述されている。1980年代の「新しい右翼」や21世紀の極右現象までを視野に入れた同書の翻訳は、本研究テーマを俯瞰するうえで非常に有意義であった。 二つ目は、南山学会人文・自然系列春学期研究例会(2023年7月開催、於南山大学)での研究発表「フランスにおける対独協力者に対するエピュラシオン(粛清)1944~1953年――司法裁判と大赦に注目して――」である。2023年上半期までに調査し終えた粛清裁判記録と大赦手続きに関する文書館史料を用い、フランスの対独協力者に対する粛清裁判の実態について実証的に検証した。粛清裁判や大赦法の適用に関する手続きを明らかにすることができた一方で、この研究発表では、主に1944年から1951年まで実施された粛清裁判のごく一部の事例しか扱えなかったという課題が残った。 その不足を埋めるべく、2023年夏と2024年3月には約2週間ずつフランスに滞在し、文書館史料の調査の続きを実施することができた。それでも閲覧できたのは、膨大に存在する粛清裁判関連の公文書のまだ一部にすぎない。しかし確実に分析材料は補強されたので、然るべき区切りを付けて論文にまとめたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は2023年8~9月と2024年3月に約2週間ずつ渡仏し、フランス国立公文書館で史料調査を実施することができた。フランスでしか閲覧することができない文書館史料の調査を年2回行えたのは、本研究の4年目にして初めてのことであり、とても有意義であった。 予想以上に関連する公文書の分量が多く、また多岐にわたって保管されていることは、すでに2022年度に実施した史料調査の際に確認したことであるが、今年度の調査の中でもやはり把握していなかった重要な関連文書に遭遇した。史料調査を実施するたびに分析すべきと思われる新史料に遭遇するという状態だが、どこかで区切りを付けるべく、調査・分析すべき史料の整理と選定が必要であることを改めて痛感した。 加えてやはり、コロナ禍による最初の2年間の研究の停滞が影響し、昨年度に入手できた史料の分析はまだ途中である。当初の計画を変更し、分析対象時期をずらすなど工夫しているが、なお分析には時間を要するため、進捗状況は全体的に遅れていると言わざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、研究課題名にあるとおり、1944~1949年における粛清裁判の実態に特化して分析する予定であった。しかし、実際にフランスで関連するいくつかの種類の公文書を閲覧してみると、そのあとに制定され、運用された1951年および1953年の大赦法に関連する史料を検証したほうが対独協力の実態がより把握しやすいことがわかった。それらの史料を読み解くことで、対独協力者のフランス社会からの排除(粛清裁判)だけでなく包摂(大赦法)の論理とプロセスを考察することが可能となるというメリットも実感できた。 したがって、今年度初頭から大赦法関連の史料の分析を進めてきた。その作業は途中であるので、今後もそれに集中して取り組みたい。ただし「現在までの進捗状況」で述べたとおり、その分量はあまりに膨大であるので、まずは1000件(セーヌ県特別裁判所で出された有罪判決総数の約1割)を目安に分析を進め、区切りを付けて論文および研究発表の形で成果をまとめたいと考えている。
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Research Products
(3 results)