2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13215
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
野口 理恵 奈良女子大学, 大学院人間文化総合科学研究科, 博士研究員 (70835339)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 修道女 / 愛徳姉妹会 / 看護 / ナイチンゲール / 病院 / フランス / 近代 / 女子修道会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世俗化が進む第三共和政期以前に着目することで、近代フランスにおける女子修道会の社会福祉活動を、孤児院、慈善学校、病院といった施設との繋がりや、国家との繋がりを多角的に考察して、当時の社会の仕組みを明らかにするものである。研究を進める上で以下の三つのテーマを設定している。 ①パリの公立病院と女子修道会の連携 ②修道女の育成 ③福祉施設と女子修道会 令和2年度(2020年度)は、①のテーマを進め、公立病院での看護や医療福祉施設に携わる修道女の資料収集と資料分析に重点を置いた。これまでの調査で、F.ナイチンゲールが書き残した史料の分析が有用であると判明したため、『ナイチンゲール全集』( Lynn McDonald, and Gerard Vallee (ed), Collected Works of Florence Nightingale:The Complete Set, WLUPress, 2013.)を入手し、分析を進めた。 また、7月には、関西フランス史研究会において「近代看護の源流としての女子修道会」と題した報告をおこなった。これは、19世紀に発展した女子修道会の特徴を持つ会が設立されたのが17世紀であるため、アンシャン・レジーム期からの整理が必要と考え、主に七年戦争時とクリミヤ戦争における愛徳姉妹会の看護を扱った。ここでの質疑応答で、多くのフランス史研究者から有益な示唆を得た。 年度後半は「テーマ①パリの公立病院と女子修道会の連携」に関する論文の執筆を進めつつ、令和3年度の学会発表に向けて、看護学の分野から修道女研究を行っている研究者との打ち合わせと情報交換を行った。 その他、本年度中に依頼を受けた、テーマ①に関連する記事が掲載された一般向けブックレットが近日刊行予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新型コロナ感染症のため、対応業務に割く時間が研究時間を圧迫した。また海外渡航制限により、予定していた資料収集と現地での確認事項の遂行が困難になった。以上の理由により、研究の進捗はやや遅れており、今年度は執筆を進めていた論文の投稿を見送った。 また、近代の修道女については、共和政期に公から排除された存在ということもあり、アクセスできるフランス側の資料や先行研究が少ないなか、パリで愛徳姉妹会をはじめとした修道女の看護を目の当たりにしたナイチンゲールの記述は貴重であるため、『ナイチンゲール全集』の分析に着手した。しかし、ナイチンゲールはパリや修道女に関することは、日記や冊子などの形では記しておらず、記述が点在している状態であり、その上、ナイチンゲールから修道女への評価にかなりの揺れがあることもあり分析に時間がかかっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、新型コロナ感染症のための生じた対応業務にかなり時間を費やしたが、今後は、万全とはいえないまでも、比較的順応した状態で研究に当たれると感じている。令和2年度完成させるはずであった論文は、さらに推敲を重ねて完成させ、それと合わせて、令和3年度は複数の論文を執筆する予定である。 海外での資料調査、現地調査は、今後しばらく困難になるかもしれないことを考慮して、できるだけ国内での資料収集で対応する。そのため、研究テーマの微修正を考えている。これまでの調査から、上記3つの研究テーマすべてに関わる課題として、また、博士論文執筆時点で得られた結論をより発展させられるテーマとして、「19世紀の女子修道会が発展した理由」に関する調査を追加することを考えている。これまで、発展理由として、〈法的根拠、政治体制、カトリックのイメージの変化〉を挙げていたが、より直接的に裏付けされた理由を探るべく、19世紀に女子修道会が飛躍的な発展を見せた時期の大規模修道会の総長に注目して、彼とフランス政府や教皇庁との関係を考察することを視野に入れている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大で海外調査を見送ったことによる。今後、感染状況が落ち着けば、海外調査を計画し、状況によって叶わなければ、国内での史料収集に当てる。
|
Research Products
(1 results)