2020 Fiscal Year Research-status Report
革命・ナポレオン時代フランスにおける近代的地方行政システムの成立プロセス研究
Project/Area Number |
20K13219
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
藤原 翔太 福岡女子大学, 国際文理学部, 講師 (50824166)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス革命 / ナポレオン / 地方行政 / 県会 / 郡会 / ラングドック / 地方三部会 / ガール県 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はフランスの諸県文書館での現地調査を実施する予定であったが、コロナ禍のために調査を断念せざるを得なかった。そこで昨年度までに収集済みであったガール県文書館に所蔵される史料、とりわけナポレオン時代のガール県会とガール県内に4つ設置された郡会の議員の経歴、社会経済的性格、地域代表性の分析を実施した。その結果、県会には常に各郡が適切な割合で代表されるよう配慮されていたこと、さらには県内の12~13の小郡が県会で代表者を保持していたことが明らかになった。この小郡の一定の代表性は、県会議員の居住コミューンが基本的に、各小郡庁所在地(あるいは、郡庁や県庁)であったことから説明できる。同県では、農村部コミューンに居住する代表者が少なく、多くの県会議員は都市部の、とりわけ小郡庁所在地の居住者であった。従って、同県の地域代表性の特徴としては、県会における都市エリート層(つまり彼らが居住する拠点都市部)の重要な代表性と、各郡の間のバランスの取れた代表性を指摘することができる。 また、県会と郡会の議事録を考察すると、各郡会における議論が県会の議論に大きな影響を与えていた実態が明らかになった。これはナポレオン時代の郡会が地方行政において大した影響を持たなかったとする定説を覆すものであり、この地方に独自の傾向であると思われる。すなわち、かつてのラングドック州におけるディオセーズ行政管区がガール県の郡単位とほぼ等しく、旧地方三部会における行政経験・行政慣行が同地域に根付いている可能性が想定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当初、フランスでの現地調査を予定していたが、コロナ禍のためにそれを行うことができなかった。その一方で、昨年度までに収集済みのガール県文書館史料の解析に時間を割くことができたので、ガール県の県会議員及び郡会議員の経歴、社会経済的性格、地域代表性、そして県会と郡会の議事録の解析を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、地域比較アプローチを採用しているので、現地調査が不可欠である。しかし、コロナ禍のために来年度の現地調査が可能であるか定かではない。そこで、来年度、もし現地調査ができない場合には、すでに収集済みのガール県文書館の革命時代に関わる史料の解析にあてることで、これまでに実施してきたナポレオン時代の県会と郡会と、革命時代の地方行政を比較検討することで、本研究の課題である、革命時代からナポレオン時代にかけて一般利害と地方利害の問題はいかに折り合いをつけられて地方統治が実現され、またその性質を変えていったのか、という問題に対する見通しを得たいと考えている。
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