2021 Fiscal Year Research-status Report
革命・ナポレオン時代フランスにおける近代的地方行政システムの成立プロセス研究
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20K13219
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
藤原 翔太 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (50824166)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 名士リスト制度 / フランス革命 / ナポレオン時代 / ブリュメール派 / 選挙 / 統領政府 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、本年度もコロナ禍のためにフランスでの現地調査を実施することができなかった。そこで、本年度はこれまでにフランス国立文書館で収集したレドレル私文書群の史料を分析し、フランス統領政府期の選挙制度である名士リスト制度の実態とその設立の背景にあるブリュメール派の統治理念を明らかにすることを目指した。この選挙制度の実態を解明することは、フランス革命からナポレオン時代への移行が如何にして行われたかを理解するのに不可欠な課題であった。具体的には、議会で弁論された名士リスト制度の法案理由、法案作成に関する国務参事院の議事録、統領と大臣の質問に対するレドレルの回答等、名士リスト制度の生成プロセスを明らかにするのに不可欠な史料を分析した。その結果、3段階の互選と任命制、選挙区の分割と郡単位の選挙、3種類の投票用紙の存在(区内・区外・追加)、個別投票と相対多数、不在者の取り扱いが、名士リスト制度の重要な特徴をなしていることが明らかになった。これらの特徴を備える名士リスト制度は、極めて複雑な形式を備えていたが、この複雑性は、ブリュメール派の最大公約数的な願望から生じたものであることが指摘できる。すなわち、代表制、能力主義、安定した統治の実現、都市支配層の優先的選出と公職者と住民の間の「信用の共同体」の設立、最大限の市民の信任の獲得、政治グループの圧力の排除、反権力の抑止を可能にするものとして、名士リスト制度が考案されたのである。 以上の研究成果は、論文「名士リスト制度論ーブリュメール派の統治技法」として、『歴史学研究』第1020号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、フランス現地での史料調査を予定していたが、コロナ禍のために実施することができなかった。ただし、その一方で、フランス革命からナポレオン時代への移行が如何にして行われたかを理解するのに不可欠な名士リスト制度に関する研究をまとめて、公表することができた。それにより、革命期からナポレオン時代にかけて選挙制度がどのように変化したかの全体的な見通しを立てることができたので、今後の地方行政の質的変化の研究を実現するための土台作りをすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度、フランスでの史料調査が実施できる場合には、ガール県文書館での史料調査を行いたい。特に未収集の革命期の史料調査を実施したい。しかし、コロナ禍のために渡仏できない場合には、ナポレオン時代の地方行政制度を設立した共和暦8年プリュヴィオーズ28日法の制定プロセスを検討することで、同制度の特徴とそこにみられるブリュメール派の統治理念を明らかにしたいと考えている。それにより、フランス革命期からナポレオン時代への地方行政制度の質的変化の見通しを立てることができるからである。最終年度に本研究の成果をまとめあげるためにも、不可欠なプロセスとなるだろう。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は674,204円となる。翌年度分(900,000円)と合わせて、翌年度にフランスでの現地史料調査を実施する予定である。ただし、引き続きコロナ禍のために現地調査ができない場合には、理論的考察を可能にするための図書費等に使用する。また、翌年度分のうち残余分が出た場合には、それを最終年度にまわすことで、もともと最終年度には予定していなかった現地史料調査を実施することを考えている。
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Research Products
(3 results)