2021 Fiscal Year Research-status Report
Writing Women in Medieval Europe: Intellectual Activity and Text Production in Helfta
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20K13223
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
三浦 麻美 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (40814893)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歴史 / ヨーロッパ / 中世 / ジェンダー / リテラシー / キリスト教 / 修道院 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はヘルフタ修道院で作成された史料について、救済をめぐってのテクスト内で描かれた共同体のあり方に着目して内容分析を行った。その成果を口頭報告、共同編者をつとめた論文集刊行により公開し、様式分析にも着手した。 ヘルフタのゲルトルート『神の愛の使者』は従来、ゲルトルート本人の手になる第2巻を重点的に考察することで中世後期のドイツで展開した婚姻神秘主義と聖心崇敬の先駆に位置付けられてきた。これに対し、本研究は分析範囲を作品全体に拡大し、作品の大部分の執筆を担った修道女たちの共同体という性質が作品に与えた影響に着目した。論文「ヘルフタのゲルトルートー西洋中世の女子修道院における聖なる共同体の変質ー」は前年度刊行の論文「呪詛ではなく祝福を」の考察を深化させ、同じシトー会女子修道院であるオーバーヴァイマールとの比較から、ヘルフタ修道院が修道者の集団として閉鎖性を強め俗人を排除するようになった傾向を指摘した。 この変化を知的活動の面から、より明確に考察したのが口頭報告「自由学芸から神学へ」である。ここでは、ハッケボルンのメヒティルト『特別な恩寵の書』と『神の愛の使者』の構成、レトリック分析を通じて、女性に対するスコラ学の影響を具体的に抽出し、霊性の変遷と結びつけて考察した。この報告および質疑応答で得られた知見にもとづき、テクスト作成の背景にあった知的文脈の展開を主題とした論考を2022年度に執筆予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大のパンデミックにより海外文献調査が不可能な状態が継続しているため、テクスト分析に専念している。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点までで、当初の計画にあった『特別な恩寵の書』『神の愛の使者』という各史料の基本分析を行い、両者の比較に着手した。その結果、女性の知的活動における自由学芸・スコラ学の影響をより正確に把握する必要が生じた。この点の解明は、14世紀にかけて女性の修道生活の規範が厳格化することに神学の展開が与えた影響を把握するのに有益であり、『特別な恩寵の書』第4巻にある修道生活をめぐる教訓が書き留められた意義の評価につながると考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより海外文献調査が不可能となったため、調査渡航費並びに備品のための費用の支出がなくなった。 翌年度分として請求した助成金により、文献調査の実施並びに史料のデジタル化依頼が可能であるかどうかを検討中である。
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