2023 Fiscal Year Annual Research Report
Writing Women in Medieval Europe: Intellectual Activity and Text Production in Helfta
Project/Area Number |
20K13223
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
三浦 麻美 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (40814893)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 西洋中世史 / 女性 / 宗教運動 / 神秘主義 / リテラシー / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
西洋中世における女性のリテラシーに焦点を当て、「書く」という行為が社会的に持ち得た影響力を学問・学芸活動の文脈から考察した。分析対象である神秘主義文書は、時間や空間を超越した超自然的体験を主な記述対象とする。また、このジャンルの著作には女性の関与が多く見られる。そのため、従来の研究は女性による特殊な宗教的体験の記録と位置付けてきた。しかし、本研究は中世を通じて数百点に及ぶ写本が流布しえた作品は同時代の知識人や学術傾向と密接に関わった可能性があると考え、その具体的内容と背景の解明に取り組んだ。 ヘルフタ修道院で作成されたテクスト群については、修道院共同体内での神秘主義の発展過程を明らかにするため、テクスト分析に取り組んだ。『神の愛の使者』第1巻で幻視者と著述者が異なる点に着目し、個人的な幻視体験が修道院共同体の中で共有された意義を分析し、論文として投稿したが、現在は書き直し作業中である。そのために2024年2月にヘルフタ修道院に滞在し、幻視者のイメージについて調査を行った。修道院では幻視者ヘルフタのゲルトルートはペンと赤子イエスをアトリビュートとして表現されており、ゲルトルートの表象におけるリテラシーの重要性が確認できたが、その受容実態の解明は新たな課題である。 また、西洋中世における女性の宗教性への理解を深めるため、テクスト作成・伝播時における宗教運動についても研究を進めた。修道院外の女性たちに関する証書や伝承では寄進、祈祷といった実践が多く扱われ、中世盛期においてはリテラシーが修道院に限定された特殊な行為だったと考えられる。
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