2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13229
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
白石 哲也 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (60825321)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 魚食文化 / 考古学 / 弥生時代 / 土器使用痕 / 実験考古学 / 民族考古学 / 脂質分析 / 炭素・窒素同位体比分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、和食の原点である弥生時代のコメと魚の食文化を解明することを目的としている。従来、弥生時代の魚食文化については、沿岸部の集落遺跡などで出土した漁撈具から復元していく研究が中心的であった。しかし、近年の遺物研究の進展によって、土器を用いた調理の痕跡(土器の使用痕)と調理内容物に対する分析方法である炭素・窒素同位体比分析や土器胎土の脂質分析のような理化学分析を組み合わせることで、より具体的な調理方法や食の内容に迫ることができるようになった。本研究では、これらに加え、実験と民族学的な検証方法を組み合わせることで、より確からしい弥生時代の食文化を復元することを目指している。 2021年度は、沿岸部の農耕集落として著名な神奈川県池子遺跡と弥生時代の中心的集落のひとつとされる唐古・鍵遺跡及び隣接する清水風遺跡の調査を進めた。その結果、池子遺跡では普段の食事のなかでコメと海洋性食物を混ぜた食事をしていることが明らかになった。また、清水風遺跡でも同様の成果を出ており、特に清水風遺跡は内陸の遺跡ということもあり、重要な発見となった。 また、実験についても横浜市歴史博物館とともに8点の弥生土器を復元製作した。なお、これらの参考とした資料は、弥生時代中期の煮沸土器であり、調理時に被熱を受けた痕跡が明瞭に捉えられているものである。しかし、今年度はコロナ禍によって度重なる緊急事態宣言が発令され、公的機関である博物館での実験は断念せざるを得なかった。そこで、研究協力者とともに次年度に向けた実験計画を再策定し、準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、神奈川県池子遺跡(11点)と奈良県清水風遺跡(10点)で出土した土器の使用痕分析と土器脂質分析を実施した。また、横浜市歴史博物館と協働して、実験で使用する土器を8点製作した。今年度は、コロナ禍の影響により、海外での民族調査が実質的に不可能となり、度重なる緊急事態宣言を受け、調理実験を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、海外調査は難しい状況にあり、国内での調査を重点的に進める方向にする予定である。具体的には、当初予定していた分析対象地域を拡大し、対象遺跡を2~3遺跡程度、増やすことにした。また実験についても、コロナの状況に拠るものの、準備は完了しているため、博物館と調整しながら実行に持っていく。このように今年度は、コロナ禍での対応方法も見えてきたため、調査と実験を重点的に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、コロナ禍のため研究補助者を雇うことができなかったため、大幅に人件費・謝金が残った。来年度は、データ整理のため、研究補助者を雇うことが決まっており、そちらで使用する予定である。また、データ分析費として、その他についても使用する予定となっている。
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Research Products
(2 results)