2020 Fiscal Year Research-status Report
日本列島後期旧石器時代前半期の石器使用:木質資源の組織的加工を示す痕跡の研究
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20K13235
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岩瀬 彬 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (70589829)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 後期旧石器時代前半期 / 刃部磨製石斧 / 石器使用痕分析 / 実験考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界各地へ拡散した初期の現生人類は、各地の環境に応じて多様な技術や行動を柔軟に生み出した。約3.8万年前頃に日本列島へ到達・定着した現生人類もまた列島の冷温帯の森林的環境に適応的な技術や行動を組織していた可能性が高い。刃部磨製石斧をはじめとする後期旧石器時代前半期の各種石器はどのような機能・用途をもっていたのか。本研究では基礎的な実験研究と遺跡資料の石器使用痕分析、そして遺跡発掘を通して、列島に最初期に到達した現生人類が伐採から木製道具製作へといたる木質資源の組織的な加工技術を発達させていた可能性を検証する。 初年度では3つの研究項目:(1)刃部磨製石斧の使用実験、(2)遺跡資料の石器使用痕分析、(3)長野県大久保南遺跡の発掘と分析、を実施する予定であったが、新型感染症拡大の影響を受け(2)および(3)を実施することはできなかった。そこで(1)の作業に関連して、(1-a)透閃石岩製刃部磨製石斧の実験複製品26点の製作と、そのうち7点を用いた使用実験(乾燥皮のなめし、水漬け骨の掻き取り)、および(1-b)刃部磨製石斧のデータベース作成、を実施した。 上記の(1-a)使用実験の結果、皮なめしおよび骨加工に特徴的な使用の痕跡(使用痕光沢面・微小剥離痕・摩耗)が形成された。透閃石岩製の石斧であっても、頁岩・黒曜石製の剥片石器によく類似した痕跡が形成されることを確認した。また(1-b)データベース作成の結果、北海道から九州にかけて後期旧石器時代前半期に相当する刃部磨製石斧および関連資料が1113点出土していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型感染症拡大の影響を受け、他県への移動を伴う(2)遺跡資料の石器使用痕分析、および(3)長野県大久保南遺跡の発掘と分析、を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も新型感染症拡大の影響を受け、研究機会が制限される可能性がある。社会状況を鑑みながら、研究可能な時期を的確に捉え、着実に分析を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
新型感染症拡大の影響により、他県への移動が制限されたことで旅費をほとんど使用することができなかった。次年度においては社会状況や感染状況が許す期間を的確に捉え、石器使用痕分析および遺跡発掘を実施する予定である。
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