2021 Fiscal Year Research-status Report
縄文時代の石材獲得と石器製作・流通に関する研究 -山梨の流通中継遺跡からの視点-
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20K13237
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
金井 拓人 帝京大学, 付置研究所, 助教 (60779081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 黒曜石 / 水晶 / 原産地推定 / 蛍光X線分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では縄文時代の石材獲得と石器製作ならびに石器流通像を明らかにするため、黒曜石原産地推定手法の新規開発と、水晶および黒曜石製遺物の原産地推定を実施する。 本年度は分析装置に依存しない非破壊黒曜石原産地推定手法の開発に重点を置き、シンポジウムでの発表の後に投稿論文として発表した。具体的にはエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用い、蛍光X線強度比を元素濃度比に変換することで非破壊かつ装置非依存のデータを得ることができることを確認した。元素濃度比のデータは対数比変換を行い主成分分析によって解析することで、黒曜石の原産地判別図が作成できることを提案した。 黒曜石遺物の分析については、山梨県の諸磯式期を代表する遺跡である天神遺跡と釈迦堂遺跡群を対象に、昨年度同様約3,000点の原産地推定を実施した。昨年度までのデータと合わせて約6,000点の原産地推定結果をもとに黒曜石の獲得と流通に関する検討を開始した。 水晶については金山林遺跡出土の約150点の分析を実施している途中である。 黒曜石・水晶ともに計画通りに分析を進めることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の一番の課題であった分析装置に依存しない非破壊黒曜石原産地推定手法の開発については、投稿論文が受理され計画していた研究成果を得ることができた。水晶の原産地推定については、データの新規解析手法について検討し、新規手法が遺物に適用できる手法であるかを確認している段階である。遺物の分析については黒曜石約3,000点と水晶約100点の原産地推定を実施することができたが、当初の計画よりは分析点数が少ない。これは、昨年度の分析結果と合わせて6,000点の黒曜石の原産地推定が完了した段階で、研究対象地域である山梨の諸磯式期を代表する4遺跡の分析が完了し、データ解析および論文執筆に費やす時間が増加したためであり、研究全体の進捗状況は計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
黒曜石についてはこれまでの分析結果を総括した論文の投稿を最重要課題とし、論文準備の過程で新たに生じた課題を解決する遺跡を対象として黒曜石原産地推定を実施する。これまでは甲府盆地東部の遺跡を中心に原産地推定を実施してきため、より関東平野に近い、大月市や都留市での分析を実施する計画である。また水晶についてはデータの新規解析手法を論文として投稿するため、その手法の妥当性を実際の出土遺物を用いて検討し、年度内での投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度も新型コロナウイルス感染症流行にともない黒曜石原産地での調査が実施できなかったため、旅費が大幅に未使用となった。また、所属機関において出勤を最低人数に制限する期間があったため、人件費についても未使用が生じた。ただし、アルバイトに作業をお願いする予定だった標準資料の分析前処理を外部委託によってカバーしたため、当初の見込みよりは分析前処理にかかる費用が増額となり、結果的には未使用分を相殺する形で予算を執行し研究計画通りに研究を推進することができた。今年度も若干の未使用が生じたが、これは当初の計画よりも論文執筆に要する時間が増え、アルバイトを必要とする分析の時間が減少したため、人件費が未使用となったことが理由である。来年度は研究最終年度として分析に当てる予算を少なめに見積もっているため、今年度の未使用分については来年度の分析補助のためのアルバイト賃金として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)