2021 Fiscal Year Research-status Report
日本における都城制成立以前の宮殿構造に関する考古学的研究
Project/Area Number |
20K13239
|
Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
鈴木 一議 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (90443572)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 飛鳥時代 / 宮殿 / 飛鳥宮跡 / 脇本遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、都城制成立以前の飛鳥時代の宮殿構造について、建物遺構に対する考古学的分析から、その新たな位置付けと歴史的意義の解明を目的とする。 本研究計画では、研究目的に従い、飛鳥時代の宮殿構造を把握するために、宮殿と宮殿が置かれた地域の居宅の建物遺構に対する比較・検討をおこない、それを踏まえて東アジアの同時代の宮殿構造との比較・検討をおこなうものである。 研究2年目にあたる本年度は、昨年度に引き続き、国内における宮殿および居宅の発掘調査事例(発掘調査報告書)の収集・整理、研究関連文献の収集を進めるとともに、建物遺構に対する考古学的分析も進めた。建物遺構に対する考古学的分析では、「飛鳥時代の宮殿構造の把握」を目的に、奈良県に所在する宮殿遺跡である飛鳥宮跡を対象に、その私的空間における建物遺構の規模・構造・配置について整理・検討を進めた。その結果、私的空間における建物の規模は桁行5間以上が主で長舎が多く、構造は二面廂付掘立床束建物がほとんどで、配置は東西棟が主で中心的な建物以外は整然とした配置をとらないという構造的な特徴を把握した。また、公的空間の建物遺構との比較では、中心的な建物については、私的空間よりも公的空間の方が、構造的に格式が高いことも確認した。さらに、奈良県に所在する宮殿関連遺跡である脇本遺跡についても検討し、飛鳥時代の建物群は東西棟が主であり、飛鳥宮跡の私的空間における建物配置と共通する可能性を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究2年目にあたる本年度は、国内における宮殿および居宅の発掘調査事例(発掘調査報告書)の収集・整理について、資料整理補助員の雇用により概ね順調に進展している。さらに、本研究の目的である「飛鳥時代の宮殿構造の把握」について、最もその内容が明らかな飛鳥宮跡の検討を進めることができたため、概ね順調に進展している。 しかし、同時代の宮殿や居宅における建物遺構に対する検討が一部にとどまっている影響で、宮殿と居宅との比較をあまり進めることができなかったことに加え、新型コロナウィルス感染症の影響で、発掘調査事例に対する現地調査ができず、建物遺構の分析項目のうち立地に関する検討が進められていない。よって、全体的な進捗状況はやや遅れており、研究方法の見直しが必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度もこれまでと同様、発掘調査事例(発掘調査報告書)の収集・整理、建物遺構に対する考古学的分析を継続して実施する。しかし、研究の進捗状況がやや遅れていることを考慮し、対象となる事例をより厳選し、建物遺構に対する考古学的分析とそれをもとにした宮殿と居宅との比較をより推進する段階に移行する。さらに、新型コロナウィルス感染症の影響も考慮し、対象事例の厳選にあわせて、その地域も整理し、立地に関する検討をより簡略化する。これらの方策に基づき、研究をより推進していく。
|
Causes of Carryover |
当初計画では、対象事例の検討に伴い、現地調査を計画していた。しかし、これまでの研究の進捗状況や新型コロナウィルス感染症の影響で、予定していた現地調査が叶わなかったため、旅費を執行できなかった。加えて、対象事例の立地に関する検討にかかる各種資料やデータ等を購入する予定であったが、上記の理由でこれらを購入できなかった。よって、次年度使用額が生じたため、今後の研究の推進方策に基づき、特に立地に関する検討にかかる物品については、次年度に購入する。
|
Research Products
(2 results)