2023 Fiscal Year Annual Research Report
飲食物表現からみた古代東アジアにおける古墳葬送儀礼の考古学的研究
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20K13242
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
松永 悦枝 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (40625927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 古墳葬送儀礼 / 飲食物表現 / 土器 / 土製模造品 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食物表現が古墳葬送儀礼のなかでどのように表現されてきたのか、古墳に副葬された土器や食べ物をかたどった土製模造品の分析を通し、古代東アジア古墳の飲食儀礼の実態とその歴史的背景について解明しようと試みるものである。分析には、①土製模造品、②動・植物遺存体、③炊飯具副葬、④破砕行為に着目する。副葬土器の組成とともに土器自体の地域様式を基軸にし、日韓、そして中国大陸の事例の比較研究をおこなうことで、食物表現が葬送儀礼のなかでどのように表現されていたのか、これを通して各地域における墓制の特質をあきらかにすることを目的とする。4年目となる本年は、分析項目の②と関連し、動・植物遺存体出土古墳のデータベース化に向けた整理を行いながら、全体の総括および総括報告書の作成を遂行する予定であった。日韓古墳出土の動・植物遺存体については先行研究において集成されていたが、最新成果を加えると53遺跡200事例強(牛馬供犠を除く)を数えた。これらをもとに、2023年3月には、新羅・加耶古墳における食物供献儀礼の具体像について論文を発表した。また、新型コロナウイルス感染症の影響などでできなかった韓国調査を実施し、項目②や④についての追認調査をおこなうことができた。その際、金属製品の研究者を協力者として現地調査をおこない、鉄製儀器の副葬行為との比較も加えながら、現地において韓国人研究者を交えた意見交換の機会を設けた。①~④の項目を有機的に総括し、日韓や中国大陸との具体的な比較まではいたらなかったが、食物あるいは飲食物を示す各項目の分析を行うことで、古墳葬送儀礼における食物表現と土器副葬行為の在り方についての見解を示すことができたと考える。 課題期間中に総括としての公表はかなわなかったが、継続して検討を進め、成果の一部については来年度4月刊行予定の学術誌にて公表する計画である。
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