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2020 Fiscal Year Research-status Report

出土木製遺物の保存処理の飛躍的効率化を実現する溶媒蒸発を用いた薬剤含浸技術の確立

Research Project

Project/Area Number 20K13252
Research InstitutionNara National Research Institute for Cultural Properties

Principal Investigator

松田 和貴  独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (60791035)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords出土木材 / 保存処理 / 含浸 / 溶媒蒸発 / 移流
Outline of Annual Research Achievements

遺跡から出土する脆弱な木製遺物の保存処理には、安定化のための薬剤含浸に長い期間を要することから、その効率化が長年の課題とされてきた。現在実用化されている薬剤含浸の手法は、溶液中の溶質の濃度勾配による拡散を利用するもので、その進行は原理的に極めて緩慢である。本研究では、遺物表面からの溶媒蒸発を利用して木材内に溶液の流れを生じさせ、移流によって遺物内部に溶質を能動的に移動させる新たな薬剤含浸法(以下、新手法と称す)の確立を目指している。
令和2年度は、出土木製遺物の保存処理に用いられる種々の薬剤の溶液について、濃度や温度と粘度との関係など、木材内部への浸透性に大きくかかわる物性に関する基礎データの収集をおこなった。これをもとに、各種の溶液を任意の粘度に維持するための、適切な温度や濃度などの条件を検討した。また、新手法による薬剤含浸を最大限効率化するために理想的な溶液の粘度の推移(溶液濃度の上昇計画)と、その実現のための温度や溶媒蒸発速度などの条件を検討するため、難含浸性とされる樹種の出土材を用いた薬剤含浸の基礎実験をおこなった。さらに、薬剤含浸後の出土木材に対する適切な固化方法についても検討を進め、本年度はとくに真空凍結乾燥法を併用した保存処理実験を実施した。
以上の基礎的な実験の結果、新手法の実現可能性をあらためて確認するとともに、各種の出土木材の保存処理の良否を左右する因子に関する知見を蓄積することができた。令和3年度以降、出土木材の材質的特徴が保存処理溶液の浸透性に及ぼす影響を把握を進める予定である。これにより、任意の出土木材について、新手法を用いる場合の適切な処理条件を検討できるようになると考えられる。
本研究の遂行により、出土木製遺物の保存処理における効率の飛躍的な向上のほか、作業の手間や経済的負担の大幅な削減が期待される。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

年度当初に振動式粘度計の購入を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により入札公告が約2か月遅れた。そのため、研究環境の整備にも多少の遅れを生じたが、機器の導入後は、想定より早く実験装置を構築できたことから、当初の予定通り実験に着手することができた。なお年度途中で当該粘度計に故障が生じ、使用できない期間も生じたものの、基礎データの収集に関しては、概ね順調に進めることができたと考えている。

Strategy for Future Research Activity

令和3年度は出土木材の材質的特徴が保存処理溶液の浸透性に及ぼす影響の把握を進める。具体的には、樹種や木取り、劣化状態などの異なる種々の出土木材について、容積密度や最大含水率および透水係数などを測定し、これら相互の関係を求めデータを蓄積する。これにより、任意の出土木材について、比較的容易に含浸可能な溶液の粘度と、その溶液の含浸に要する時間を推定可能とすることを目指す。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症の影響により、参加を予定していた学会大会がオンライン開催となり、旅費の支出額が減じたため、次年度使用額が生じた。
実験の効率化のため、必要器具等の増備を進める予定である。

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Published: 2021-12-27  

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