2021 Fiscal Year Research-status Report
Sustainability of Inclusive Urban Spaces during Processes of Inner City Transformation
Project/Area Number |
20K13264
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
キーナー ヨハネス 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (50825784)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウィーン / 大阪 / 福祉 / スケール / インナーシティ / ケアの空間 / ホームレス / 生活困窮者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には、大阪市とウィーン市におけるホームレス支援を整理し、空間的な分析のために3つの課題を洗い出した。まず、ホームレス政策のスケール(scale)である。大阪市には生活保護法や生活困窮者自立支援法などの中央政府が策定した法律が多く、市がホームレス政策に直接関わったのは主にあいりん地区に関わる政策のみである。それに対して、ウィーン市では市の方がほとんどのホームレスに関わる政策を策定し、オーストリアの連邦政府や欧州連合からの影響が少ない。 次の課題はホームレス政策とインナーシティ(inner city)の関係である。大阪市には、過去のホームレス政策は西成区に集中していた。近年の政策にはその傾向が弱まったといっても、福祉住宅の市場とサービスハブ形成によって過去の空間的なパターンが再生された。ウィーン市には過去のホームレスアサイラムは周辺的な場所にあったが、近年のホームレス政策によって施設は市域に分散されるようになり、インナーシティに集中する場合が少ない。 最後の課題はケアの空間(space of care)である。大阪市にはホームレスのためにケアの空間を形成する団体は新しい政策の担い手になった社会福祉法人などの長く市と協力する団体である。さらに生活保護の適正化によって市場原理に従って運営されている民間の住宅・団体なども重要になった。しかし、それらの担い手は政策立案に関わる機会が少ない。それに対して、ウィーン市には民間の福祉団体がホームレス政策の立案に積極的に関わる。よって、民間の福祉団体の考え方はホームレス支援に形成されているケアの空間にも反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の主な課題は大阪市とウィーン市の福祉サービス担い手の調査であった。一方で、ウィーン市で施設長・副長16人のインタビューを行い、予定より多くのインタビューであった。しかし、コロナ禍の影響で調査実施が遅れたため、大阪市の調査を来年度に後回しにすることが必要になった。 調査の実施に伴い、本研究に関する口頭報告も行った。それはAmerican Association of Geographers(2021年4月)と大阪市立大学都市研究プラザ事業総括シンポジウム(2022年2月)で、大阪市とウィーン市の比較研究に関する理論的な考察を行った。さらに、RC21 Conference "Sensing the City"(2021年7月)とUrban Mobilities in the 21st Century Workshop(2021年7月)とThe 5th ISGS Global Seminar(2022年1月)で、既存の調査から大阪市のホームレス支援とインナーシティの住宅市場についての発表を行った。2件の発表を予定していたため、口頭報告は当初の計画以上に進展した。 さらに論文報告も行った。それは『埼玉大学紀要(教養学部)』(2022)と大阪市立大学都市研究プラザの『URP「先端的都市研究」シリーズ30』(2022年3月)で理論的なフレームワークに関する2つの出版物であった。2件の論文報告を予定していたため、目的を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究計画は次の通りである。大阪市の福祉サービス担い手調査が後回しにしたため、2022年度にその15件のインタビューを行う。それに加えて、計画通りに大阪市とウィーン市で15件の福祉サービス利用者のインタビューも行う。さらに福祉サービス担い手の追加調査も行う。追加調査の対象者は、ウィーン市の場合に市のホームレス支援を管理するFonds Soziales Wienの関係者と、大阪市の場合にあいりん地域の現状を把握されている西成労働福祉センターの関係者になる。 そして、2つの口頭報告を予定している。それは国内の学会でウィーン市の福祉サービス担い手の調査成果についての報告である。そして、国際の学会でウィーン市と大阪市の福祉サービス担い手の調査成果についての報告である。 最後、2つの論文報告を予定している。それは国内の雑誌にウィーン市の福祉サービス担い手の調査成果を日本語で報告することである。さらにウィーン市と大阪市の福祉サービス担い手の比較調査成果を国際の雑誌に英語で報告することである。
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Causes of Carryover |
当該年度の所要額が生じた理由と使用計画は次です。30万円の旅費が発生する理由は2022年度のウィーン市と大阪市の福祉サービス利用者(と福祉サ―ビス担い手)の調査を行うことである。交通費と共に、両市で12泊の滞在費が発生する。さらに国内と国際の学会に参加することも予定しているため、交通費と滞在費(国内は1泊、国際は2泊)も発生する。 20万円のその他の費用が発生する理由は福祉サービス利用者のインタビューの文字起こしを業者に頼むことである。または論文報告のために、日本語校正と英語校正も業者に頼む予定である。 そして、次年度使用額が生じた理由と使用計画は次です。コロナの影響で予定していた大阪市での調査が実施なかったことなどにより次年度使用が生じたが、次年度に使用額から80万円を単著原稿の英語校正のために利用する予定である。Springer Natureという出版社と契約を結び、8万ワーズの規模の原稿を投稿する予定である。母国語は英語ではないため、英語で執筆した原稿のネーティブスピーカー校正が必要になる。
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