2023 Fiscal Year Research-status Report
Sustainability of Inclusive Urban Spaces during Processes of Inner City Transformation
Project/Area Number |
20K13264
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
キーナー ヨハネス 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (50825784)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大阪 / ウィーン / ホームレス / 生活困窮者 / インナーシティ / ケアの空間 / 支援団体 / 住宅政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度にはインナーシティの変容過程の実態について、大阪市内の3つの界隈(北加賀屋、中崎町、西成区北西部)から明らかにした。そのために戦前後に建設された賃貸住宅のリノベーションに分析の中心を置き、ジェントリフィケーションとの関連性を議論した。一方、テナントによるリノベーションが認められた賃貸住宅はアーティストの居住や作業場とカフェや雑貨屋などの店舗に転用されており、他方、「福祉住宅」と呼ばれた家主などによるリノベーションされた賃貸住宅は生活保護受給者の居住になった。次の理由で、このリノベーションはジェントリフィケーションと異なる現象を起こしたと考えられる。 リノベーションは認められたため、賃貸住宅の自由な利用が可能になり、アーティストのニーズに合うようになった。しかし購入が不可能で老朽した薄弱な構造の賃貸住宅なため、インセンティブが低くてリノベーションが最低限度のみで行われた。さらに、アーティストは自営業者や兼業でアートを行う経済的な弱者である。カフェや雑貨屋などの店舗に転用された賃貸住宅は店舗経営者にとって魅力的な空間であった。その空間が生かされたためリノベーションは低賃金で済み、数日間しかかからなかった傾向があった。さらに、店舗による収入が低かったため、経済的に困り兼業をした店舗経営者が多かった。それに対して、福祉住宅に転用された賃貸住宅の場合に家主は水回りを含むより高いリノベーションを行った。しかし、部屋の区切りにできたワンルームマンションの福祉住宅の居住者は生活保護を受給する傾向があり、収入が少ない者である。 このようにリノベーションによる戦前後に建設された賃貸住宅の価値が上がりづらく、入居者は低収入者なため、ジェントリフィケーションと違う現象であると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度に原稿の執筆で本プロジェクトが一歩前に進んだ。『Urban Geography』という国際雑誌で掲載論文による研究報告を行い、そしてSpringer Natureの原稿執筆も進んで、執筆の3分の2を完了させた。しかし、企画していたウィーン市と大阪市の現地調査は進まなかったため、進歩状況は「遅れている」と判断した。 2023年度に原稿執筆にかけた時間と、大学の運営と教育にかけた時間が予想外に多かったため、国内外で現地調査を行う余裕がなかった。その理由で、補助事業期間延長承認申請を行い、2024年度にウィーン市と大阪市で現地調査を実施することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度に2023年度に実施できなかった調査を行う予定である。それは大阪市の福祉サービス担い手調査、大阪市とウィーン市の福祉サービス利用者調査、そして大阪市とウィーン市の福祉サービス担い手の追加調査である。追加調査の対象者は、ウィーン市の場合に市のホームレス支援を管理するFonds Soziales Wienの関係者と、大阪市の場合にあいりん地域の現状を把握されている西成労働福祉センターの関係者である。 更にもともと予定していた口頭報告と論文報告の一部の代わりにSpringer Natureのための原稿執筆に全力で取り組む予定である。つまり、2024年度の研究報告の一部を単著の執筆で行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に次年度使用額が生じた理由は次の通りである。本研究へのコロナの影響を減らすために単著を書くことにして、Springer Natureという出版社と契約を結んだ。しかし、原稿の執筆に必要な時間を確保するために調査の実施に影響が出てしまい、2023年度に実施できなかった調査を2024年度に実施することになった。 2023年度に次年度使用額の使用計画は次の通りである。大阪市の福祉サービス担い手の調査とウィーン市と大阪市の福祉サービス利用者の調査を行うために40万円を利用する予定である。それは交通費と共に、両市12泊の滞在費を含む。さらに、30件のインタビューの文字起こしにも40万円を利用する予定である。そして、残りの80万円を単著原稿の英語校正のために利用する予定である。母国語は英語ではないため、英語で執筆した原稿のネーティブスピーカー校正が必要になる。本原稿の規模は8万ワーズ程度になる。
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